電通デジタルは、電通グループでデジタルマーケティング事業を展開している。GoogleやMetaといったプラットフォーム事業者(プラットフォーマー)が提供する「データクリーンルーム」にいち早く着目し、ソリューションの開発を進めてきた。
電通デジタル プラットフォーム部門ソリューション戦略部データクリーンルームグループの友井大将氏によると、データクリーンルームは「プラットフォーマーが広告主・広告会社などに提供するクラウド環境」になる。個人のプライバシーに配慮した形で、利用許諾済みのプラットフォーマーが保有するユーザーデータと企業が持つファーストパーティーデータ、その他の外部データをさまざまなニーズに応じて柔軟に統合・分析することが可能となる。
電通デジタルでは、欧米でクッキーデータの活用が制限され始めた2016年からデータクリーンルームに着眼し、各プラットフォーマーが提供しているデータクリーンルームの活用を他社に先駆けて推進してきた。
データクリーンルームの活用に当たり、人材の育成にも力を入れている。データクリーンルームでのデータ連携や活用には、データサイエンスの専門的・法的知識が必要になる。そこで、電通グループは、独自の研修・育成制度を整備した。この制度では、統計や機械学習などのデータサイエンスの技術だけでなく、法律や規約を順守し、生活者にとって有益なデータ利活用を行うためのデータ倫理も教えている。このような専門性を持ち、データクリーンルームを実務で活用する社員を「認定アナリスト」と呼び、現在電通デジタルを含め、数百人規模で認定されている。
サードパーティークッキーの制限によって、広告配信や効果計測の精度の低下につながると懸念されているが、「データクリーンルームの活用によって、より高い精度と安全性をもって、テレビや屋外広告、デジタルマーケティングなどオンラインオフライン両軸で事業成果に与えた影響を可視化できる」(電通デジタル プラットフォーム部門ソリューション戦略部コンサルティンググループの仲井翔平氏)という。
電通デジタルの友井大将氏(右)と仲井翔平氏
データクリーンルームの登場で、オンライン広告の効果をオフラインの売り上げに直接関連付けられるようになった。これにより、広告主はデジタルな世界だけでなく、現実の世界での広告効果を客観的に測定できるようになるという。この技術が広告主にとって大きな価値を提供すると友井氏は強調した。
仲井氏は、オンライン広告の効果をオフライン店舗での購入と紐付けて分析できるようになったと語る。また、会員IDなどのデータはサードパーティークッキーのように短期間で消えるものではなく、長期間にわたって有効に活用できるというメリットを強調した。時系列データを用いることで、過去の傾向や未来の予測を基に、広告戦略の策定や効果測定をより精度高く行うことができる。