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起点は「データの集約」--Snowflake インダストリーCTOが説く、小売業界のデータ活用

大場みのり (編集部)

2023-12-04 07:00

 Snowflakeは、社内外に散在するデータを集約し、インサイト(洞察)の獲得を支援するクラウドデータプラットフォーム「Snowflake」を提供する米国企業。ストレージ/コンピューティング層が分離した構造により、複数のワークロードを大規模並列処理できる点が特徴だ。顧客企業数は2023年7月時点で8537社に上る。

 同社は、製造や金融など業界に特化したSnowflakeの利用方法を提案している。小売業界・食品/消費財(CPG)業界でIndustry CTO(最高技術責任者)を務めるTim Benroeck(ティム・ベンロイック)氏に、海外の先進事例を交えたデータ活用のプロセス、小売業界で想定される大規模言語モデル(LLM)の活用例を聞いた。

Snowflakeで小売およびCPG担当Industry CTOを務めるTim Benroeck氏
Snowflakeで小売およびCPG担当Industry CTOを務めるTim Benroeck氏

 Benroeck氏は、ブランドや小売企業がたどるデータ活用のステップとして(1)データサイロの解消、(2)コラボレーション、(3)データサイエンスと機械学習(ML)、(4)新たな顧客体験(CX)の提供、(5)新たな収益源の創出――を挙げる。

 「データサイロを解消し、全てのデータをSnowflakeに集約する最初のステップが最も重要である。データの集約が実現すれば、他部門や子会社と連携できる。パートナー企業ともコラボレーションでき、サードパーティーデータでデータセットを一層充実させられる。その結果、データサイエンスを行ったり、LLMを構築したりでき、新たなCXや収益源を生み出すことにつながる」とBenroeck氏は話す。

データサイロの解消

 「データサイロの解消は、小売企業の大半がSnowflakeを活用したジャーニーを始める地点」とBenroeck氏は述べる。企業はさまざまなデータソースを持ち、その全てに独自のデータベースがあり、データパイプラインを介して別のデータベースと連携している。こうした状況において、ビジネスユーザーは「Excel」などでレポートを作成し、他部門が見ているものとは異なるデータに基づいて意思決定してしまう危惧がある(図1)。

図1:散在する社内データ 図1:散在する社内データ
※クリックすると拡大画像が見られます

 大手スーパーマーケットを展開する英国企業Sainsbury'sは、旧式のデータシステムにより、自社と複数の子会社間のデータがサイロ化していた。同社は顧客理解に向けてSnowflakeを導入し、全てのデータを一箇所に集約。その結果、約6時間かかっていたクエリー業務を3秒ほどで完了できるようになったという。

コラボレーション

 「コラボレーションは、Snowflakeが他のデータプラットフォームと大きく差別化できる点」とBenroeck氏は自信を見せる。同氏は、過去数年間におけるSnowflakeの成長を示した図形を取り上げ、「それぞれの点がSnowflakeの顧客、線が顧客同士のデータ共有を表している(図2)。この体制により、小売企業やメーカーに加え、広告会社やマーケティング企業なども成長している」とアピールする。

図2:年々進む顧客数と企業同士のデータ共有 図2:年々進む顧客数と企業同士のデータ共有
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 Snowflakeは業界を超えたデータ連携に向けて、顧客企業が自社のデータを販売する「Snowflake マーケットプレイス」を運営しており、日本でも提供されている。例えば、天気や気温は消費者の商品選びに影響を与えるため、小売企業は気象データを踏まえて店内のレイアウトなどを行っているという。

 米国の大手スーパーマーケットを運営する企業Albertsonsは、同国に拠点を置く食品メーカーThe Kraft Heinz Companyとデータを共有しており、「この事例は私のお気に入りの一つ」とBenroeck氏は話す。両社は店内の在庫切れ改善に向けて、店舗やサプライヤーと在庫データをリアルタイムに共有。検証を行ったAlbertsonsの店舗では、平均20.4%だった在庫切れを6週間で6.7%に減らすことができた。「こうしたデータ連携は両社の収益に直接的な影響を与え、Snowflakeの活用で達成できることの一例である」(同氏)

データサイエンスとML、新たなCX・収益源の創出

 先述した通り、MLでデータサイエンスを行うには、全てのデータを一箇所に集めることが必要となる。ASICSは、カスタマイズされたマーケティングを行うため、全ての顧客データをSnowflakeに集約。これにより、同社はデータサイエンスを行って顧客のマイクロセグメントを作成し、パーソナライズされた広告/マーケティング施策を展開できるようになった。

 「パーソナライズされた広告/マーケティング施策を行うことで、ASICSは有益な結果を得られた。多くの場合、広告は企業にとって最大の支出の一つなので、より良い結果を得ることは素早い投資回収につながる」とBenroeck氏。

 Snowflakeでは安全なデータ共有機能によりデータクリーンルームを実現し、小売企業はリテールメディアネットワーク(小売企業がデジタルチャネルの一部を広告スペースとして販売するビジネスモデル)の提供を検討できる。サードパーティーCookieの廃止が予定される中、広告主はパーソナライズされた広告やマーケティングを提供する方法を探している。「リテールメディアネットワークは広告主の活路、小売企業の新たな収益源となる」と同氏は展望を述べる。

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