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Notion共同創設者ザオ氏が考える製品へのAI導入--「必要なのは適切なUI」

河部恭紀 (編集部)

2023-11-22 07:30

 コラボレーションツール「Notion」を提供するNotion Labsは11月14日、「Notion AI Q&A(AI Q&A)」のベータ版提供を発表した。同社の共同創設者 兼 最高経営責任者(CEO)であるIvan Zhao氏に自社製品へのAI導入について聞いた。

Ivan Zhao氏
Ivan Zhao氏

 同社は現在、戦略としてAIに力を入れているが、そのきっかけとなったのは、2022年9月に「GPT-4」の早期バージョンを見る機会を得たことだとZhao氏は振り返る。よりバージョンの低い「GPT」のデモを3年ほど前に目にした時は「“可愛らしい”が、仕事には使えない」という印象だったが、GPT-4は「本当にスマートで頭が良くなっていると感じた」と同氏。

 OpenAIやAnthropicなどのAI企業は、「Amazon Web Services(AWS)」「Microsoft Azure」「Google Cloud」といったクラウドサービスのプロバイダーと同じだとZhao氏。Notion Labsは、AWSを利用してアプリケーションを開発している。同社にとって大規模言語モデル(LLM)はクラウドサービスと同じであり、可能性の高さから、その上でアプリケーションを構築したいと考えたと同氏はいう。

 NotionにおいてAI Q&Aは、AIを利用した3番目の機能で、「AIライター」「AI自動入力」に続くもの。AIライターは、ページ内の情報を理解して文章を生成・翻訳する。AI自動入力は、データベースのページにある情報の要約や会議で出たタスクの抽出、プロジェクトに関する更新情報を自動生成する。これら機能が文の生成が主なのに対し、AI Q&Aは、答えを回収するという違いがある。

 通常の検索と異なり、ユーザーが質問したことに回答することで情報を提示する。Notion内に蓄積された情報を利用するため、Notion内に情報が多くなるほど強力になる。セキュリティも考慮されており、質問の回答となる情報は、Notionで設定されたアクセス権を持つユーザーだけに表示される仕組みだ。

Notion AI Q&Aの画面。ウェブサイトデザイン改修プロジェクトに関して読むべきドキュメントはどれかという質問に対し、該当するドキュメントをNotion内のナレッジベースから探して回答する。
Notion AI Q&Aの画面。ウェブサイトデザイン改修プロジェクトに関して読むべきドキュメントはどれかという質問に対し、該当するドキュメントをNotion内のナレッジベースから探して回答する。

 LLMの利用において、事実とは異なる不正確な回答を生成するハルシネーションは問題視されている。しかし、AI Q&Aは、Notion内に存在する情報を利用するためハルシネーションの心配はないとZhao氏。「われわれのエンジニアは、AI Q&Aがハルシネーションを起こさないよう、多大な労力を費やしている」(同氏)

 AI Q&Aは、AI技術の一つである取得拡張生成(Retrieval Augmented Generation:RAG)に基づいている。RAGは、質問への回答にユーザー固有のデータを使い、生成AIにそれらを渡して回答する。

 顧客からは、Notionに蓄積された多くの情報を活用したいという要望が挙がっていた。その一方で、AIの進化によってさまざまな技術が登場していた。顧客のニーズを考えた場合、RAGという技術が有効なのではと思ったとZhao氏はいう。会社に関連する情報を保持するメモリーに当たるものがあり、それとの会話を可能にするのがAI Q&Aだと同氏は説明する。

 AIの進化は、同社製品の開発に影響を与えたという。Notionの歴史を振り返った時、ドキュメントやページが「Notion 1.0」、情報を整理するためのデータベースが「Notion 2.0」、そして、ワークフローが「Notion 3.0」に相当するが、自動化を考える必要があるとZhao氏。AIが備えるスマートさは自動化をこれまでと異なる方法で実現し、日常の退屈な作業をより効率良く行えるようにするとZhao氏は語る。AI Q&Aを例に挙げ、情報取得の高速化に貢献すると同氏はアピールする。

 AI機能の導入で注意しているのは、ちゃんと使えるものであること、適切なユーザーインターフェース(UI)で提供することだとZhao氏。言語モデルやAIを作っている側でも、AIで何ができるかを認識していない節があるという。AIコミュニティーではAIの能力を引き出す技術についての議論が活発だが、AIの能力を開花させるには適切なUIが必要と同氏は指摘する。

 例えば、GPT-3はしばらく前から存在していたが、便利だという認識が一般で得られたのはChatGPTという形で提供されてからだという。AI機能にとって適切なUIを作るのが自分たちの仕事だとZhao氏は強調する。

 AI企業は、脳に相当する部分を構築し、知能を司っているのに対し、Notionは、UIを提供するとともに記憶(メモリー)の部分を担う。ユーザーは、UIを介してはじめてLLMが持つインテリジェンスの使用が可能になるとZhao氏。そして、情報はドキュメントなどの形式でNotion内に格納される。

 Notion Labsは、顧客のニーズやRAGのようなAI技術をUI上で組み合わせて提供するのに長けているとの考えを同氏は示す。Notionは、その優れたユーザーエクスペリエンスにより、個人にも大企業にも使ってもらえているという。

 同社の共同創業者 兼 最高執行責任者(COO)であるAkshay Kothari氏は、NotionのAI機能が頼れるパートナーとして使われる傾向にあると語っている。AIが進化するにつれ、スマートさが向上し、より多くのことが可能になる。そのため、アシスタントとしてさらに高いレベルの作業を任せられるようになるとZhao氏は予測する。

 AI Q&Aも、単に情報を取得するというだけでなく、思考の流れを固めるのに利用できるという。AIをブレインストーミングの相手として使い、同僚とやりとりするように質問を繰り返すことでメモリーから答えを引き出し、考えをまとめることができる。

 AI機能に関する今後の予定としては、より高いレベルで人の能力を強化するような機能を提供したいとZhao氏は述べた。

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