松岡功の「今週の明言」

シスコ新社長が語った「シスコでないとできないこと」とは何か

松岡功

2024-02-02 11:00

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、シスコシステムズ 代表執行役員社長の濱田義之氏と、富士通 クロスインダストリーソリューション事業本部 Sustainable Manufacturing Sustainable Transformation事業部 シニアマネージャーの新美弘氏の「明言」を紹介する。

「日本の成長に貢献するため、シスコでないとできないことに挑みたい」
(シスコシステムズ 代表執行役員社長の濱田義之氏)

シスコシステムズ 代表執行役員社長の濱田義之氏
シスコシステムズ 代表執行役員社長の濱田義之氏

 米Cisco Systemsの日本法人シスコシステムズの代表執行役員社長に1月1日付で就任した濱田氏は先頃、オンラインで記者会見を開いた。冒頭の発言はその会見の中で、新社長としての意気込みを述べたものである。

 濱田氏は会見で、Ciscoのグローバルでの事業戦略とともに、日本法人としてのビジョンを図1のように示した。

 会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭の発言に注目したい。

 濱田氏は図1を示しながら、「私は2016年にシスコに入って以来、これまで一貫して『シスコのテクノロジーやサービス、パートナーエコシステムを通じて未来価値を創造し、お客さまのビジネスの成功、そして、日本の持続的成長と社会変革に貢献する』ことを追い求めてきた。日本がこれから成長していくためには、あらゆる分野においてのデジタルトランスフォーメーション(DX)が欠かせない。その要望にお応えすべく、『シスコでないとできないこと』に挑戦していきたい」と話した。

(図1)シスコシステムズのビジョン(出典:シスコシステムズの会見資料)
(図1)シスコシステムズのビジョン(出典:シスコシステムズの会見資料)

 冒頭の発言は、このコメントの最後の部分を取り上げたものである。

 そこで筆者が興味を抱いたのは、「シスコでないとできないこと」との言葉を濱田氏がどのような意味で使ったのかだ。なぜ、興味を抱いたのかと言えば、そこに同氏が「シスコ独自」に対してどのような見解と自信を持っているのか、知りたいと思ったからだ。ということで、会見の質疑応答で尋ねてみたところ、次のような答えが返ってきた。

 「シスコがお客さまに提供したいのは、個別の課題に対応したポイントソリューションもさることながら、さまざまな課題に対応したソリューションを組み合わせてトータルでお客さまのニーズにお応えできるプラットフォームだ。しかもそれをお客さまそれぞれのニーズにお応えできるように、米国本社と連携を図るとともに、日本のビジネスパートナーとの緊密な協業に尽力し、その総合力によって日本に貢献していきたいと考えている。シスコでないとできないことと申し上げたのは、そういう意味だ」

 キーワードは「プラットフォーム」だが、同氏が最も強調したいのは、その背景にあるシスコならではの「総合力」だと受け取った。

 筆者は濱田氏がシスコに入社してから幾度か取材してきた。中でも同氏が執行役員 最高技術責任者(CTO)として入社して間もない2016年8月に、当時同社が推進していた「フォグコンピューティング」(今で言うIoTの概念)について取材したときの同氏のコメントが印象に残っている。その内容は次のようなものだ。

 「これまでのITにおけるコンピューティングは、集中と分散を繰り返してきた歴史がある。そして今、その波はクラウドの出現で集中に向かっている。しかし、これからのIoT時代は、クラウドによる集中だけでは、データ処理が追いつかないのは明らかだ。IoT時代に対応するためには、クラウドとシームレスに連携した分散の仕組みが不可欠になる。集中と分散の“合わせ技”によるコンピューティングアーキテクチャーをどう描いていくか。フォグコンピューティングの発想の原点はそこにある」

 結局、フォグコンピューティングという言葉は広がらなかったが、こうしたコンピューティングの本質についての話を熱く語っていた同氏の姿を今もよく覚えている。

 今回のオンライン取材の後にも直接お会いする機会があったが、エネルギッシュな姿は変わっていない。1974年9月生まれの49歳。脂の乗った仕事ぶりに注目したい。

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