サイバーセキュリティテクノロジーを提供するWithSecureの日本法人のウィズセキュアは2月28日、2024年の事業説明会を開催した。
Ari Vanttinen氏
まず、WithSecureで最高マーケティング責任者(CMO)を務めるAri Vanttinen氏が登壇し、2023年の業績を紹介。2023年度売上高が1億4281万ユーロ(228億4800万円、1ユーロ=160円換算)で前年比6%増だったとし、F-Secureから分社化しての1年半で黒字化を達成したことは大変誇りに思うと述べた。
製品・サービス別売上高は、クラウドベース製品が57.3%、オンプレミス製品が17.1%、コンサルティングが25.6%だった。地域別で見た場合、欧州が47.4%と最も多く、北欧が27.9%、日本およびその他の地域が14.9%、北米が9.8%と続いた。「ビジネスは間違いなく成長しており、このトレンドを今後も継続していく」(同氏)
同社は、セキュリティ上の脅威と顧客の行動に関するトレンドを考慮した「3x3」と呼ばれる戦略を策定している。
セキュリティ上の脅威に関するトレンドとしては、サイバー犯罪者が1つの業界を形成している「サイバー犯罪の産業化」、社会のデジタル利用が進むことによる「攻撃対象の急速な拡大」、サプライチェーンにある関係企業の脆弱(ぜいじゃく)性を考慮する必要がある「脆弱相互接続されたビジネス世界での攻撃の影響」の3つがある。
顧客の行動に関するトレンドとしては、最小限の効果的なセキュリティを持つことで効果を最適化する「『必要最小限のセキュリティ』へのシフト」、セキュリティアプローチが企業により主導される米国や規制中心の中国と異なり、より民主的で個人情報に配慮しながら規制を適用する「『ヨーロピアンウェイ』がもたらす成功」、中堅中小企業が経済成長の原動力となりつつことによる「パートナーと中堅・中小企業の信頼関係」の3つがある。
これら6つを組み合わせた3x3戦略(図1)は、上段が製品ポートフォリオ、中堅中小企業の支援、ヨーロピアンウェイといったフォーカスポイントで構成される。
図1
製品ポートフォリオを柱の一つとすることで同社がよりソフトウェア企業になっていることを示すとVanttinen氏。製品ポートフォリオには、クラウドベースの統合サイバーセキュリティプラットフォーム「Elements Cloud」が含まれる。
中堅中小企業の支援の背景には、中堅中小企業ではITセキュリティチームのリソース不足が課題となっており、支援を必要としていることがあるという。中堅中小企業はリソース不足の中で圧倒されており、サービスが十分に提供されてないと感じていると同氏は述べる。
ヨーロピアンウェイにおいては、その旗手となることを同社は目指しているという。企業が欧州にある、もしくは、欧州における運営や規制に関するアプローチを好ましいと考えている場合、同社はヨーロピアンウェイにおけるナンバーワンのパートナーと見なされる必要があるとVanttinen氏は力を込める。
3x3戦略の下段は、「コ・セキュリティ」、AI、SaaSドリブンなビジネスにおける卓越性で構成される。
コ・セキュリティは、同社のセキュリティに対する考え方。パートナーやエンドユーザーと一緒にセキュリティに取り組むことを示す。
AIについて、同社は、20年におよぶ実績があるという。サイバー犯罪者もAIを使っており、AIに対してAIで戦う必要があると同氏は語る。デジタル化された企業は、より多くのデータなどを守る必要があるため、人の能力だけでは限界があるという。
また、ビジネスがスケーラブルであるためには製品もSaaSベースである必要があり、Vanttinen氏は、これがSaaSドリブンなビジネスだと説明し、自社内に全てを持っておきたいという時代は終わったということだと続ける。このような背景から、企業はソフトウェア、テクノロジー、機能をサービスとして購入したいと考えるという。
ポートフォリオにあるElements Cloudは、一つに統合化された体験をユーザーに提供し、サイロ化された製品間やコンソール間を行き来することを不要にする。フルモジュラー形式で、顧客のニーズに合わせて自由に構成ができる。
コ・セキュリティはWithSecureにとって差別化要因だとVanttinen氏は述べる。Elements Cloudは、プロビジョニングとアクティベーションを一つのポータルで実行可能な生産的なサービス「Co-Security Services」を提供するプラットフォームで、異なるサービスをバラバラに利用することを不要にすると同氏はアピールする。
Elements Cloudは、Co-Security Servicesに加え、エンドポイントにおける検知と対応(Endpoint Detection & Response:EDR)、エクスポージャー管理とカテゴリー分けされた機能群で構成される(図2)。
図2