ガートナージャパンは3月14日、デジタルワークプレースと働き方の未来について最新の展望を明らかにした。
同社によると、生成AIに対する関心が高まるにつれて、デジタルワークプレースの領域でも日常的に生成AIを活用する時代が到来しているという。同社はこれを「日常型AI(Everyday AI)」と呼び、従業員の生産性向上や業務効率化に寄与するとし、多数の企業がデジタルワークプレースでの生成AI導入を積極的に検討し、導入に向けた動きが活発化していると指摘する。
しかし、社内全体に生成AI製品を展開しようとする企業が増えている一方で、適切な準備をせずに導入することで、従業員の混乱やテクノロジー活用に懸念が生じている。急速な日常型AIの導入では、前提条件の確認やリスクレベルの評価が十分でないケースがあり、AIを安全に利用できる「AI Ready」の状態でない企業にとってはリスクとなる可能性がある。
同社はまた、生成AIは従業員の働き方を変える可能性を秘めているが、その効果やリターンを明確にするのは難しいと語る。日常型AIがまだ技術的に進化過程にあることを考えると、結論を急ぐのも適切ではない。その上で、従業員が慣れるための期間を1年や2年といった余裕を持って設定することが重要になる。今後、企業は従業員に対して、生成AIなどの新たなテクノロジーの積極的な業務利用を期待するようになり、そのためには最も効果が期待できる従業員を特定し利用を促進することになるという。
ディレクター アナリストの針生恵理氏は、「企業では、デジタルワークプレース領域における生成AIを適切に利用するために、実際に手を動かし生成AIに意欲的に取り組む人から構成されるガバナンス組織(センターオブエクセレンス:COE)を立ち上げ、ポリシーやルールを策定するのがよいだろう。さらに、有効な使い方や普及を促進するために、ビジネス部門内に生成AIを有効に活用するための実践コミュニティー(CoP)を立ち上げることで、従業員の仕事に効果を生み出す、生成AIの活用を促すことも有益になる。デジタルワークプレースを担うリーダーは、従業員による日常型AIに対する過度な期待を抑え、リスクを共有し、より良い利用やスケジュールについて、ビジネス部門とコミュニケーションを図り、従業員にとってのリターンを生み出せるようにしていくことが重要だ」と述べている。
同社の見解では、2027年までに日常型AIを主導する組織を設けない企業の8割は、生成AI導入の乱立と混乱で成果を生み出せなくなると見ている。