ロックウェル オートメーション ジャパンは、グローバルで実施した製造業のスマートマニュファクチャリングに関する調査から日本での特徴などについて発表した。過去1年の投資対効果(ROI)の高い技術では、「クラウド・SaaS」や「生成AI」が世界平均より高いことが分かった。
この調査は、英Sapio Researchに委託して、2023年9~10月に日本を含む17カ国の製造部門を持つ1567社のマネージャーや経営幹部にオンラインで実施した。
まず過去1年のROIの高い技術について、上位2つは「クラウド・SaaS」(日本35.7%、世界平均25%)、「生成AI」(日本26.5%、世界平均21.0%)だった。第3位は、日本では「産業用PC」(21.9%)、世界平均では「5G」(18.3%)と異なった。この1年に、日本ではAIの実装が進み、世界平均よりも生成AIへのROIを実感していることが読み取れるという。
(出典:ロックウェル オートメーション ジャパン)
また、AIが2027年までに製造業務に影響を与える分野について、日本での上位3つは「プロセス最適化」(37.0%)、「サイバーセキュリティ」(36.0%)、「持続可能性やESG(環境・社会・統制)関連の目標のコンプライアンスと追跡」(32.0%)。世界平均での上位3つは「品質管理」(38.7%)、「サイバーセキュリティ」(36.6%)、「プロセス最適化」(35.5%)だった。
(出典:ロックウェル オートメーション ジャパン)
日本および世界では、共通して「サイバーセキュリティ」が高い一方、世界では最多の「品質管理」が日本では24.0%で10番目と異なった。同社は、日本の製造部門が既にさまざまな手段で高度化を進めてきた品質管理よりも、AIによる需給予測の精度向上といった既存プロセスの最適化を通じた国際競争率向上に一層期待していることが考えられると分析している。
今後1年間の労働力の支障となることについては、世界では「チェンジマネジメント(新たなプロセスや技術に対し順応すること)」が36.0%で1位だったものの、日本では「労働力の高齢化」が36.0%で1位だった。労働力の高齢化は、世界では7位となっており、労働人口が減少している日本の製造企業が高齢化に焦りを示す結果になったという。さらに、「スキルを持つ人材を含む人件費の上昇」が日本では34.0%、世界では31.1%と、熟練技術者などの取り合いが加速していることも想定されるという。
(出典:ロックウェル オートメーション ジャパン)
2024年にビジネスの成長を阻害する外部要因では、日本の回答者の45.0%が「サイバーリスク」を挙げており、30.1%だった世界よりも懸念が高いことが分かった。ビジネス成果を生み出すスマートマニュファクチュアリング機能についても、世界全体ではAIや機械学習がたかったのに対し、日本ではサイバーセキュリティが43.0%で最多だった。
なお、収集したデータの中から効果的に使用できている割合については、回答の中央値が43.6%と低く、日本は調査対象17カ国中14位とさらに低い状況だった。日本はさまざまなソリューションをバラバラに導入され、データの蓄積から活用までがスムーズに行われていないことなどが想定されるという。
(出典:ロックウェル オートメーション ジャパン)