シスコ、2024年度の事業戦略--「やわらかいインフラ」を組み合わせた伴走支援

阿久津良和

2024-05-13 07:30

 シスコシステムズは5月10日、約2年ぶりに情報通信関連トレンドと自社戦略を紹介する説明会を開催した。同社は通信事業者が抱える課題として「インフラストラクチャーの変革」「新たな収益源の確保」「サステナビリティー(持続可能性)」「ネットワーク可視化・自動化」「セキュリティ」の5つを掲げつつ、「各課題解決に貢献するため、2024年度は6つの領域に注力」して、通信事業者向け事業を強化する。

シスコシステムズ 専務執行役員 情報通信事業統括 木田等理氏
シスコシステムズ 専務執行役員 情報通信事業統括 木田等理氏

 シスコシステムズ 専務執行役員 情報通信事業統括の木田等理氏によると「通信ネットワークの多様な要求と、変化に対応するためのインフラ変革により、通信事業者間の競争が激化している」という。ビジネスモデルについても「通信に関連したさらなる付加サービスで収益源を確保しなければならないと、通信事業者は口をそろえる」と明かす。

 ネットワークトラフィックの増加に伴う通信装置の増設は同時に電力消費量も増やしている。この件に関してはサステナビリティーの観点から改善に取り組む。複雑化するネットワークに対して同氏は、「保守要員の減少や熟練作業者の退職に対応するための自動化につながる可視化も重要な課題」と認識している。セキュリティに対して通信事業者は「(ネットワーク攻撃などから)国内の生産設備や病院が止まってしまうのは当然ながら重要な課題」だという。

シスコにおける通信事業者向け事業の注力ポイント
シスコにおける通信事業者向け事業の注力ポイント

 通信事業者が抱える課題に対してシスコは6つの領域で支援する。最初のソフトウェアとサービスによる価値の最大化は、トータルコストの最適化や予測・実需の一致、複雑さを軽減する包括ライセンス契約や、プラットフォームをシンプル化するSaaS、開発・検証・運用の観点から品質や管理性向上を目指すライフサイクルイノベーションで対応する。

 米国本社のソフトウェアの売り上げはサブスクリプションモデルが増加中だが、木田氏は「われわれ通信機ベンダーや通信事業者は厳しい状況にある。1つは5Gのマネタイズが遅れている。もう1つはコロナ禍で特需的にネットワーク導入や拡張需要があったものの、現在は厳しい状況」であると吐露しながら、ハイブリッドワークに対応する「やわらかいインフラ」を提供するという。

 同氏は「とある調査では企業のIT投資でもネットワークやサーバーセキュリティは10%以下。だが、刻々と変化する要求条件や使用環境、接続デバイスを踏まえたインフラが重要だ。インフラを新規構築するのではなく、通信事業者がマネージドサービスとして顧客のインフラを共に作る」サービスが、やわらかいインフラだと説明した。

「やわらかいインフラ」の概要
「やわらかいインフラ」の概要

 サステナビリティーの貢献では、データセンタースイッチの「Nexus」や「Nexus Dashboard」、サーバー製品群の「UCS」(Unified Computing System)の組み合わせで、前世代機器と比べて消費電力を98%削減。ユニファイドハードウェアアーキテクチャーの「Silicon One」は前世代ルーター比較時に消費電力を97%削減。レイヤー統合ネットワークを実現する「RON」(Routed Optical Networking)は消費電力66%削減と総コストを46%削減させるという。

 さらにシスコは支援サービスとして認定再生品を提供する「Cisco Refresh」や、シスコ製ハードウェアを利用型で提供する「Cisco Green Pay」、企業や政府・自治体の規制順守やビジネス変革を支援する「Cisco Environmental Sustainability」プログラムを提供する。ネットワークの複雑化に対しても「異なる目的や対象分野を可視化する『フルスタックオブザーバビリティ』」でネットワーク監視や分析の容易化を行うという。

フルスタックオブザーバビリティの概要
フルスタックオブザーバビリティの概要

 セキュリティでは、セキュリティポリシー管理ソリューションの「Cisco ISE(Identity Service Engine)」でアクセス制御やポリシー管理を行い、セキュリティ分析ソリューションの「Cisco Secure Network Analytics」、クラウド環境保護ソリューションの「Cisco Multi-Cloud Defense&Duo」など、多くの自社製品群で「エンドポイントの通信やアプリケーションのセキュリティを確保する」と木田氏。

 AIも、AI学習効率を最大限に高める最適なGPU間通信を実現するインフラやトラフィック効率、ユーザー体験(UX)の向上などを踏まえたネットワークを用意し、AI活用に関するセキュリティ対策強化、IT運用の可観測性向上と見識の蓄積と利用、システム頑健性の強化や自動化に取り組むという。さらに、やわらかいインフラを組み合わせつつ、コンサルティング、エデュケーション、教育システム、インテグレーション、ソリューション開発のサイクルを顧客と一緒に回す伴走支援型サービスも提供するとしている。

伴走支援型サービスのイメージ図
伴走支援型サービスのイメージ図

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