内田教諭はこうした授業のアイデアをどのように着想しているのだろうか。同教諭は土日に開催される学校外の研修会などに参加し、全国の教員との対話を基にITを活用した授業を開発しているという。
内田教諭は「つくば市から都内の研修会へ頻繁に参加するのは大変なので、オンラインの研修会を中心に参加している。今後は当校やつくば市の教員が参加しやすいよう、地域でイベントを開催することも計画している」と話す。
より良い授業に向けて探求を続けられる理由について、同教諭は「児童が協働・発見しながら学ぶ姿を見るとうれしくなる。ITを用いた学びは今後さらに求められると思うので、それを推進するにはどうすればよいのかを考えると、研修会などに自然と参加したくなる」とやりがいや必要性を述べる。
その上で「締め切りが近い業務に追われるなど日々多忙だが、土日に学校外の人々と出会い、新たな発見があるとそれだけでリフレッシュできる。全ての人に勧められることではないが、それをリフレッシュと感じられる自分がいる」と語る。
こうした高い志に加え、ITを活用して校務や教員間のコミュニケーションを効率化することで、プライベートの時間を確保しながら、情報収集を行うことが可能になるのではないか。
つくば市立研究学園小学校の外観。同校は、文部科学省が推進する事業「リーディングDXスクール」に指定されている
公立小学校には、学力や家庭環境などの面で多様な児童が在籍するため、ICT教育を行う上でも工夫が必要となる。内田教諭は「特別なものではなく標準仕様の端末やアプリケーションを使うことで、協働的で個別最適化された学びの実現を目指している」と話す。
一方、これまでの教員経験において、授業で利用するITツールが児童間の多様性をフォローしていることも実感してきたという。
「例えば特別支援教育が必要な児童は、文字を書くのが苦手でもキーボードは打てたり、教員による説明は理解に時間がかかっても、動画での説明であれば自分のペースで見られるので分かったりする。外国籍で日本語を学習中の児童も普段の授業では静かなことが多いが、プログラミングの授業になると使用言語を変更できるので、生き生きとして皆の前で発表することもある」(内田教諭)
ICT教育を通して児童にどのような人間になってもらいたいかを聞くと、内田教諭は「学校で学ぶメリットは、知識の吸収というより、クラスメートに自分の考えをしっかりと伝えたり、ほかの人の考えを素直に取り入れたりする力を伸ばせること。そのため、協働学習を支援するITツールなどの活用を通して、コミュニケーション力を培ってもらいたい。AIをはじめとしたテクノロジーを使いこなし、『自身の表現を一層拡張できる人』になってほしい」と力を込めた。