IBMとSAPは米国時間5月8日、両社のパートナーシップにおいて、顧客のビジネス価値創出を支援する新しい生成AI機能と業種別クラウドソリューションを含むビジョンを発表した。IBM ConsultingとSAPは、以下の主要分野で顧客を支援することで、「RISE with SAP」による変革の加速を目指している。
- AIビジネスプロセス:両社はRISE with SAP向けの新しい生成AI機能を構築し、業界固有のクラウドソリューションや基幹業務アプリケーション全体にわたるSAPのビジネスプロセスにAIを導入する機会を検討している。IBMはまず、「SAP Business Technology Platform」(SAP BTP)を基盤とするSAPのクラウドソリューションとアプリケーションのポートフォリオ全体にAI機能を拡張することを予定している。
- 業界イノベーション:両社は、データドリブンの洞察によるエンドツーエンドのビジネスプロセスに、インテリジェントな業界向けユースケースを構築し、業界イノベーションの促進を計画している。まずは、製造、消費財、小売、防衛、自動車、公益事業に注力し、これには両社が行っている消費財/小売業界向けのAIソリューションを開発する取り組みも含まれる。
この取り組みの一環としてIBMは、業界、基幹業務アプリケーション、製品提供を横断した100以上のAIソリューションの広範なポートフォリオの開発を開始した。加えて同社は、ビジネスプロセスとAIによる効果を定義する規範的な業界バリューマップの開発を予定している。顧客は、グローバルな「IBM Innovation Studios」と「SAP Innovation Center」を通して、これらのAIソリューションにアクセスできる。
- プラットフォームアーキテクチャーと導入アプローチ:企業には、次世代のプラットフォームアーキテクチャーと、導入への近代化されたアプローチが必要となると両社は説明する。「価値創造パートナーシップ」の取り組みを通して、IBMは統合基幹業務システム(ERP)をクリーンに保つ「クリーンコアアプローチ」を可能にするリファレンスアーキテクチャーを提供し、そのためにSAP BTP、SAP Signavio、「LeanIX」の活用を予定している。これらの新しいリファレンスアーキテクチャーは、データ、プロセス、システムとデバイスの統合、プロセスのオーケストレーション、自動化における標準の定義に役立つ。
SAPプロジェクトを担当するIBMのコンサルタントは、IBMのAIサービスプラットフォーム「IBM Consulting Advantage」、独自のメソッド、アセット、アシスタントのポートフォリオを活用し、再現性と一貫性をもって顧客を支援している。同基盤の活用によりコンサルタントは、生成AIを活用してユーザーストーリーの生成、テストスクリプト、トレーニング、変更管理コンテンツ、コード作成などのタスクを完了できるようになる。その結果、SAPソリューションの提供方法を変革し、生産性の向上とリスクの低減が可能になるという。
- エコシステムの拡大:IBMとSAPは両社のビジネス女性ネットワーク、「SAP University Alliances」や「Veterans to Work」など、それぞれの従業員ネットワークグループやコミュニティーを中心に提携し、コンサルティング職におけるSAPソリューションの経験を増やすことで、人材育成を予定している。両社は、危険な環境に身を置く若者を対象とした訓練や、グローバルサプライチェーンにおけるソーシャルビジネスの統合を加速させるなど、社会的に影響のあるプログラムにおいて新たな協力方法を模索する。
- 「Generative AI Hub」で提供予定の「watsonx」:IBM Graniteモデルシリーズは、SAPのクラウドソリューションとアプリケーションのポートフォリオ全体で利用可能になる見込みで、これは「SAP AI Core」のGenerative AI Hubに支えられている。Generative AI Hubは、適切で信頼性が高く、責任あるビジネスのためのAIを促進し、幅広い大規模言語モデル(LLM)への即時アクセスを提供するとしている。
これにより、「IBM Watson AI」のSAPソリューションへの組み込みをはじめとした両社の協業が拡大する。また、IBM Consultingは「watsonx.ai Granite」の機能にハイライトを当てるため、一部の顧客向けにGenerative AI Hubのモデルを活用した拡張機能の構築を予定している。
これに含まれるものには、RISE with SAP、「GROW with SAP」、最高財務責任者(CFO)オフィス向け財務ソリューション、サプライチェーン管理ソリューション、人的資本管理ソリューション、「SAP Customer Experience」「Intelligent Spend Management」などがある。加えて、IBMは「SAP Signavio」「SAP Business AI」を活用し、概念実証(PoC)の適用プログラムを通して、ビジネスプロセスの定義を支援することを予定している。