日本気象協会(JWA)は6月11日、1カ月以上先の天候を予測する「季節予報」の精度向上と予測期間の延長を実現する技術を筑波大学 生命環境系 植田宏昭教授の協力のもと開発したと発表した。この技術を活用して同協会は、最長2年先の気象予測サービス「2年先長期気象予測」とコンサルティングを提供する。日本気象協会と筑波大学は、同技術の特許を共同出願している。
JWAは2017年度から、気象予測データを活用した商品需要予測事業を展開している。気象は飲料や季節食品、衣類をはじめとした商品の売れ行きに大きな影響を与えるため、企業は気象予測データを活用することで廃棄/機会ロスを削減できるとしている。
具体的には、気象データに加え、顧客やパートナー企業が持つ過去の出荷量/販売時点情報管理(POS)データや客数データをAIで分析することで、適切な出荷量や売り上げ、客数を予測する。
同日開催の説明会に登壇した商品需要予測事業 コンサルタントの古賀江美子氏は「気象の最大の特徴は、未来の予測が可能であること。企業は気象を(売上低下などの)言い訳にすることが多いが、この特徴をうまく活用してもらうことで、気象をビジネスの味方にできる」とアピールした。
これまで同協会は、メーカーや小売企業など100社以上に商品需要予測やコンサルティングのサービスを提供している。例えば森永製菓は、ゼリー飲料「inゼリー」において出荷量を予測し、滞貨品(売れ残った商品)を20%削減。ある小売企業は精肉の棚割を最適化し、売り上げが10.5%増加、廃棄ロスが1.1%減少した。
しかし、これまで予測できる気温は最長6カ月先で、商品需要予測の提供も6カ月先までだった。顧客は、今期の製造/販売数量の計画、増産数/タイミングの決定、商談における棚割の提案、オンラインでの広告配信計画には気象予測データを活用できていたが、海外からの資材調達計画、次年度の月別経営/マーケティング計画、テレビCMの計画など、大規模な取り組みには十分に生かせていなかった。同じ時期でも毎年気象の傾向は異なるため、前年のデータ活用にも限界がある。
実際、製薬企業では「製造リードタイムが長いので、1年以上先の需要予測が必要」、アパレルメーカーでは「1年前から行う翌シーズンの商品企画に需要予測を用いたい」、家具の製造小売企業では「海外に工場があるので、製造数を1年前から決めたい」というニーズがあったという。