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AIと仮想化による顧客貢献がレッドハットの存在意義--最高収益責任者のブラウン氏

國谷武史 (編集部)

2024-06-19 06:00

 Red Hatは、5月に開催した年次イベント「Red Hat Summit 2024」で、世界中の顧客に同社のAI戦略を示して見せた。また、仮想化の領域でも「Red Hat OpenShift」をはじめとするソリューションへの引き合いが急伸しているという。シニアバイスプレジデント 最高収益責任者を務めるAndrew Brown氏にビジネスの現状などを聞いた。

Red Hat シニアバイスプレジデント 最高収益責任者のAndrew Brown氏
Red Hat シニアバイスプレジデント 最高収益責任者のAndrew Brown氏

 Brown氏は、IBMで28年にわたり欧州や日本、北米などの各市場でソフトウェアとクラウドを中心に、テクノロジーやビジネス、セールス、マーケティングなど多様な領域の要職を歴任した。Red Hatには2023年に入社した。

 2019年のIBMによるRed Hatの買収から2024年で約5年が経過し、両社の関係は安定したものとなっている。Brown氏は、「オープンソースのコミュニティーを源流とするRed Hatのオープンソースへの貢献と情熱的でオープンな企業文化、成長を今後も変わらず継続し、パートナーと顧客のハイブリッドなITの成功に貢献を続けていくことが私の役割になる」と述べる。

 多くの企業が重要なテーマと位置付けるハイブリッドクラウドやレガシーモダナイゼーション、AIによる自動化、仮想化は、同社の成長戦略においても重要なテーマだという。

 特にAIについては、先の年次イベントで2つの方向性を示した。1つは、IBM Researchと共同でオープンソース化した大規模言語モデル(LLM)「Granite」を中心とするもので、主には企業や組織がオープンソースコミュニティーと生成AIを開発していけるよう「InstructLab」などのコミュニティーと連携した環境を提供する。もう1つは、企業や組織がデータプライバシーを確保しながら独自にAIを開発・運用していくもので、その基盤となる「Red Hat Enterprise Linux(RHEL) AI」や「Red Hat OpenShift AI」のロードマップなどを見せた。

 「われわれは、AIの価値を顧客に提供するという明確なメッセージを打ち出している。Graniteはビジネスのために設計されたモデルがあり、オープン、プライベート、クラウドハイパースケーラーなどのさまざま場所で利用できる。コミュニティーの力を活用しながら、顧客はオープンなGraniteで自社に必要な推論のトレーニングとAIの実行を加速させることができるようになる」

 世界中の企業や組織が生成AIの活用検証を進める現在は、OpenAIなどのLLMベンダーやハイパースケーラーのソリューションなどが広く利用されているが、Brown氏は、将来的に企業や組織がプライベートなAI基盤を中核として、さまざまなLLMなどを組み合わせていくと見る。

Red HatのAI戦略では、コミュニティー中心のオープンなLLM開発と企業のAI基盤ソリューションの2つを示した(レッドハットの説明会資料より)
Red HatのAI戦略では、コミュニティー中心のオープンなLLM開発と企業のAI基盤ソリューションの2つを示した(レッドハットの説明会資料より)

 AI領域における同社のビジネスは、基本的にRHELなどと同じであるとし、顧客がオープンなRHEL AIやOpenShift AIなどを自社AIのプラットフォームにしつつ、サブスクリプションを通じて同社のサポートなどを活用し、独自開発するモデルや外部のモデル、ソリューションを組み合わせていくだろうという。

 また、仮想化の領域では、BroadcomによるVMwareの買収の影響が広がり始めている。Red Hatの状況について尋ねると、Brown氏は「現在多くの顧客から問い合わせが来ている。(BroadcomがVMware顧客に提示した)新たなライセンスモデルに対する懸念が少しあるようで、顧客はわれわれに仮想化でどのような代替案を提示できるのかを求めてきている」とした。

 Brown氏によれば、Red Hat Summit 2024で仮想化をテーマにした4つのセッションを開催し、いずれも満席で場外にも聴講希望者があふれるほどだったという。

 Red Hatは、仮想化基盤として「OpenShift Virtualization」などを展開しているが、基盤の再構築にはかなりの労力や時間、コストを必要とするだけに、Brown氏は「われわれにとってもこの領域でビジネスを拡大する機会となるが、顧客がわれわれの仮想化を必要としているのであれば、まずはワークショップを通じて顧客のワークロードやインフラの状況を理解するところから始める必要がある。その上でわれわれが提示できるプランを示し、エコシステムとも協力しながら、顧客に応じて対応し、顧客の(基盤移行の)“旅路”を尊重しながら価値の高いサービスを提供していく」と語った。

仮想化基盤では「OpenShift Virtualization」への問い合わせが増えているとする(レッドハットの説明会資料より)
仮想化基盤では「OpenShift Virtualization」への問い合わせが増えているとする(レッドハットの説明会資料より)

 また、同社も長らく携わってきた「CentOS」については、CentOS 7のサポートが2024年6月末で終了し、1つの節目を迎える。Brown氏は、「何年も前よりCentOSへの対応を説明してきた通りであり、RHELへの移行という選択肢も提供している」と述べる。同社のフォーカスはRHELやOpenShift、Ansibleであり、プラットフォーム・アズ・ア・サービスの領域で顧客のアプリケーションの稼働をサポートすることにあるとし、Red Hat Summit 2024ではOpenShiftとAnsibleの長期的なサポートを強化するライフサイクルの変更も発表した。

 「これらは顧客からのフィードバックに基づくものであり、顧客に安心を提供する。われわれは、一貫性のあるプラットフォームを通じて顧客がより効率的にアプリケーションを構築、展開、管理できるようにし、イノベーションと成長を推進していく」(Brown氏)

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