SAP Sapphire

SAPのクラインCEO、生成AIの「プライムタイムの準備整う」--WalkMe買収にも言及

末岡洋子

2024-06-13 10:52

 SAPは6月11~13日、スペイン・バルセロナで年次イベントの世界ツアーの一環となる「SAP Sapphire Barcelona 2024」を開催した。12日の基調講演で最高経営責任者(CEO)のChristian Klein氏が、生成AIを中心に最新の機能を紹介した。

SAP 最高経営責任者のChristian Klein氏
SAP 最高経営責任者のChristian Klein氏

エンドユーザーから開発者まで生産性を改善する「Joule」

 Sapphire Barcelonaは、前週に米国フロリダ州で開催されたSapphireの欧州版として、主に欧州の顧客やパートナーに向けて米国で発表した内容を伝えるものとなった。

 創業52年目を迎えるSAPは、重要な転換期にある。生成AIという社会を変えるインパクトを秘めた技術トレンドが押し寄せているいま、52年前に同社を共同者らと創業したHasso Plattner氏が5月15日をもって、21年間にわたりチェアマンを務めたスーパーバイザリーボードを退いた。これでSAPの5人の共同創業者全員が同社を去った形となる。

 そのような状況で開催された今回のSapphireのテーマは、「bring out your best」だ。自社のベスト(最善)を引き出すためには明確なビジョンと戦略、そして実行するツールが必要、というメッセージだ。つまりSAPのポートフォリオにより、企業が自社のベストを引き出すことができるという。

 SAPは、数年がかりでアーキテクチャーを整備してきた。オンプレミスからクラウドへと、そこでは「SAP Business Technology Platform(BTP)」などを導入し、2023年にはAIに向けて、BTP上に「AI Foundation」、ユーザーインターフェース側ではコパイロット(作業支援ソフトウェアの通称)の「Joule」を加えた。

(経過)
(経過)
「リアルタイムトランザクションを実現するERPから、モジュラー型で統合されたCloud ERPへ、そして、AIを組み込んだ。これにより、インテリジェントでコネクテッド、かつサステナブルな企業を運営できる」とKlein氏。最新の動向を幾つか紹介した
「リアルタイムトランザクションを実現するERPから、モジュラー型で統合されたCloud ERPへ、そして、AIを組み込んだ。これにより、インテリジェントでコネクテッド、かつサステナブルな企業を運営できる」とKlein氏。最新の動向を幾つか紹介した

 「リアルタイムトランザクションを実現するERPから、モジュラー型で統合されたCloud ERPへ、そして、AIを組み込んだ。これにより、インテリジェントでコネクテッド、かつサステナブルな企業を運営できる」とKlein氏。最新の動向を幾つか紹介した。

 中でも、多くの時間を割いたのは、対話をしながらSAPのアプリケーションを操作できる「最大の生産性エンジン」(Klein氏)とする「Joule」だ。Jouleは2023年9月に発表され、まず人事クラウド「SAP SuccessFactors」とSAPのスタート画面「SAP Start」で導入され、その後は「SAP Customer Data Platform」「SAP BTP Cockpit」「SAP Build/Build Code」「SAP Integration Suite」などに拡充された。今回のSapphireでは、2024年後半に「SAP Ariba」「SAP Analytics Cloud」などでも利用できるようになることが発表された。言語も英語からドイツ語などに拡充(日本語の計画は未発表)する。

 Klein氏は、「2024年中に最もよく使われるタスクの80%がJouleにより管理されるようになる。その結果、SAPを利用する3億ユーザーの生産性は20%改善し、品質も改善する」と予想する。受注管理や財務のコンプライアンスチェック、帳簿の締めを大幅に短縮できるなどの効率化だけでなく、人事や財務での分析エンジン、SAPの膨大なデータを利用した提案などの機能を備えるようになるとの方向性を示した。「Jouleはプライムタイム(最盛期)に向けた準備ができている」(Klein氏)

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. クラウドコンピューティング

    CentOS Linuxアップデート終了の衝撃、最も有力な移行先として注目されるRHELの今

  2. クラウドコンピューティング

    調査結果が示す「Kubernetes」セキュリティの現状、自社の対策強化を実現するには?

  3. クラウドコンピューティング

    標準化されたOS「Linux」で実現するIT環境の効率化、検討すべき9つの事項とは

  4. OS

    Windows 11移行の不安を“マンガ”でわかりやすく解消!情シスと現場の疑問に応える実践ガイド

  5. 運用管理

    AWSに移行することのメリットと複雑さ--監視ソリューションの導入から活用までを徹底解説

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]