2024年は、人工知能(AI)がニッチからメインストリームへと移る年だ。この数年でAIや機械学習の技術を使用して運用のパフォーマンスを高めている企業もあるが、「ChatGPT」や「Microsoft Copilot」などの生成AIツールを本番環境に導入する方法を見つけた組織は少ない。
その傾向は、生成AIを探求して活用する組織が増えるにつれて、2024年に変化しそうだ、とForresterのプリンシパルアナリストであるDavid Brodeur-Johnson氏が米ZDNETに語った。
「2024年は、企業が生成AIを社内のデータソースに適用して、業務のさらなる改善に役立つ情報や洞察を従業員に提供する取り組みを本格化させる年になるだろう」
Rackspace TechnologyとAmazon Web Servicesが実施した調査によると、2024年におけるAIへの支出は2023年の2倍以上の水準になり、1社あたり平均250万ドルに達する見込みだという。
しかし、経営者が自動化の導入を検討する一方で、多くの従業員が、生成AIのような技術の使用拡大は決して朗報ではないと懸念している。
Forresterの調査では、米国の86%もの従業員がAIと自動化に多くの人が仕事を奪われると危惧しており、約3分の1(31%)はこのトレンドが2~5年以内に顕在化すると考えていることが明らかになった。
人材紹介会社Nash Squaredによる世界規模の調査に回答したデジタルリーダーたちも、同様の結論に達している。デジタルリーダーらが自動化のために失われると考えている仕事の割合は、平均で17%だった。
だが、文脈が重要だ。多くの仕事が自動化されて消えていくという恐れに注目が集まるのは無理もないが、AIが労働者の効率と生産性を高め、経済活動や経済成長を促進する可能性についての分析はあまりない。
Eコマース大手の楽天で学習および開発部門の責任者を務めるDebra Bonomi氏は、AIの使用拡大に向けたスタッフのスキルアップ支援を目的として、ELB Learningとの共同プログラムを自身の組織で開始した。同氏によると、全部門の従業員が変化を受け入れる必要があるという。
「これは恐れるようなことではない」とBonomi氏は米ZDNETに語った。「唯一恐れるべきは、いつまでも『自分には必要ない。自分に影響はないだろう』と言っている人間かどうかだ。そのような人たちの仕事が、好ましくない影響を受けることになる」
Bonomi氏は、自身の組織がAIの利点の探求に注力している、と述べた。楽天はOpenAIと提携してChatGPTの社内バージョンを作成しており、同社の従業員はすでにそのメリットを実感している。
「AIは効率を高めるだけでなく、われわれの仕事を変えていく」とBonomi氏。「すべての人が職を失うわけではないが、将来におけるタスク、役割、責任は、今と大きく異なっているかもしれない。その変化を受け入れて、その過程で適応を続ける限り、何も恐れることはない」
人材紹介会社Nash Squaredの最高経営責任者(CEO)のBev White氏も同様の考えで、米ZDNETに対し、AIは雇用市場の大きな変化につながる可能性があるものの、今の段階で結論を急がないことが重要だと語った。
同氏によると、自動化の導入の物語は、産業革命から現在のデジタル時代に至るまで、常に雇用の削減という恐怖を中心に展開してきたという。
AIと自動化は、一部の役割の終焉につながるだろうが、多くの職場や仕事の役割を良い方向へ変えていく助けにもなるはずだ。
White氏はソフトウェア開発に言及し、ある調査結果を引用して、「GitHub Copilot」を使用する開発者は使用しない開発者よりもタスク完了が55%速い、と説明した。
その調査では、開発者の60~75%が、生成AIツールを職務の一環として使用することで充実感が高まり、コーディング時のいら立ちが軽減され、より満足のいく仕事に集中できると回答している。
「新興技術が作業を加速させている」とWhite氏は語る。「人間のプロセスのうち、繰り返しが多く、人がやるには必ずしも興味深くないものを排除して、作業を高速化する自動化された方法に置き換えている」
自動化の水準が高まったとしても、企業はやはり人間を関与させて、複雑な顧客サービスリクエストへの対応といったプロセスを効果的に完了できるようにする必要があるだろう。
AIと自動化を戦略的に導入することで、プロフェッショナルが重要なビジネス分野に注力する機会が増えるはずだ、とWhite氏は述べた。
「作業のスピードが上がるだけでなく、コストを削減し、より多くの時間を人間的な要素に費やせるようになるだろう。この要素は、考える時間や意思決定の時間など、付加価値プロセスに不可欠なものだ」