NEC、国内従業員にデジタル社員証を導入--顔認証で入退場や決済、備品利用も

大場みのり (編集部)

2024-07-11 12:00

 NECは7月10日、デジタル社員証や生成AIなどの技術を活用した「コーポレートトランスフォーメーション」(社内DX)の取り組みを紹介するオフィスツアーを東京都港区の本社ビルで開催した。

 NECは、自社をゼロ番目の顧客とする「クライアントゼロ」の概念のもと社内DXを実践し、蓄積された知見を同社の価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」の枠組みで顧客に還元することを目指している。

社内DXの取り組みを説明したNEC 執行役 Corporate EVP 兼 CIO 兼 コーポレート IT・デジタル部門長の小玉浩氏
社内DXの取り組みを説明したNEC 執行役 Corporate EVP 兼 CIO 兼 コーポレート IT・デジタル部門長の小玉浩氏

 NECは「2025中期経営計画」の目標の一つに「エンゲージメントスコア50%」を掲げており、2023年時点では39%だった。同社は社内DXを推進することで、目標スコアの達成を図る。NECの社内DXは(1)デジタル社員証、(2)経営コックピット、(3)生成AI――の3本柱となっている。

 (1)では、デジタル社員証を中核とした従業員向けサービスをNEC本社ビルで7月から本格稼働させている。同サービスはNECの国内従業員約2万人を対象としており、ほかの事業拠点への順次拡大を予定している。

 今回導入したデジタル社員証では、NECの生体認証技術にMicrosoftの分散型ID技術を組み合わせることで、デジタルデータの改ざんを防止している。社員証をデジタル化することで紛失や不正利用を防げる。従業員は、従来のプラスチックカードの社員証を持たなくても、顔認証で本社ビルの入退場、売店などでの決済、オフィスでの複合機やロッカーなどの利用が可能となる。NECは将来的に、従来の社員証をなくしていくことを予定している。

 (2)では、全社のプロセスとデータを標準化した上で、「財務」「人事」「IT」などの10領域92種類にわたる経営情報を可視化。これにより、経営層から一般社員までの全従業員が同じデータに触れ、分析・経営判断・意思決定などのアクションを実行することが期待される。

 (3)では、NECは2023年5月、同社グループ内で安全に使える生成AIサービスの提供を開始。同社開発の生成AI「cotomi」だけでなく、グローバルパートナーの生成AIも組み合わせ、2024年7月時点で約4.5万人が日々活用している。営業支援システムなど社内167のシステムと連携しており、さらなるシステム連携や機能の拡充を進めている。

 NECは、生成AIを活用した業務効率化において成果を上げている。同社はエンゲージメントスコア50%の目標達成に向けて、組織開発で推奨される施策に関するレポートの作成を自動化。これまでは組織開発部門が分析結果を基に各組織に向けてレポートを作成していたが、生成AIの活用によりレポート作成時間を30分から3分ほどに短縮し、全組織にレポートを素早く提供できるようになった。

 ヘルプデスク業務の効率化にも取り組んでいる。NECは、従業員がナレッジに問い合わせ、未解決の場合は適切な窓口が対応するというフローにおいて、生成AIを複数組み込んでいる。現在、従業員の自己解決率は74%(目標80%)、窓口への適切な割当率は50%(同80%)、回答候補を提案するヒット率は38%(同50%)となっている。

 NECは、自社グループにおけるAIカルチャーの醸成を加速させるため、アプリやプロンプト(指示文)に関する従業員のアイデアや活用ノウハウを共有するポータルを提供するとともに、優れた活用事例を表彰するイベントを開催している。

フロアに入ると、NEC従業員の顔は認証されて名前が表示されたが、顔認証登録を行っていないツアー参加者の顔は認証されず、赤色の検出枠が表示された。うまく認証されなかった場合は、デジタル社員証を警備ロボットのディスプレーにかざして再認証する。

フロアに入ると、NEC従業員の顔は認証されて名前が表示されたが、顔認証登録を行っていないツアー参加者の顔は認証されず、赤色の検出枠が表示された。うまく認証されなかった場合は、デジタル社員証を警備ロボットのディスプレーにかざして再認証する。

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