「Sansan Labs」担当者に聞く機能開発--ビジネス課題の解決をデータ活用で目指す

河部恭紀 (編集部)

2024-08-09 07:20

 Sansanが提供する営業DXサービス「Sansan」には、未来の働き方を体験できる実験的な機能を提供するサービス「Sansan Labs」がある。同サービスには7月、「GPT」を活用した「AI人物プロフィール」が追加されている。Sansan Labsにおける開発の進め方などについて、同社の技術本部 研究開発部 SocSciグループでグループ マネジャーを務める西田貴紀氏に話を聞いた。

西田貴紀氏
西田貴紀氏

 グループ名であるSocSciは、社会科学を意味する「Social Science」から来ている。研究開発部でデータ活用を推進していたチームが基となっており、社会科学出身のメンバーが多かったことから名付けられたという。そのミッションの一つが、社会に向けてデータを活用した機能をSansan Labsで提供すること。社内では営業活動に積極的に同席するなど、データ活用の推進にも携わるが、そこで得られた知見をSansan Labsの開発に結びつけるためだという。

 同グループは、Sansan Labsに2018年の登場当初から関わっていたが、より注力するようになったのは2021年ごろから。そこからSansan Labsをリニューアルするプロジェクトが始まり、アプリケーションを高速にリリースすることを目的に開発基盤が2022年7月に刷新された。

 その背景としては、研究開発部の考え方が、名刺データを使って技術的に可能なことを製品化するというような“プロダクトアウト”から、ユーザーの課題解決につながる機能をリサーチしながら開発するという“マーケットイン”に移ったことがある。ユーザーのフィードバックを基に機能を大量・高速にリリースすることで、仮説検証の数を増やし、求められる良いものを見つけたいというスタンスを実現するという。

 具体的には、データサイエンティストが主なメンバーである研究開発部で機能を開発する際、フロントエンドのエンジニアに協力を依頼しなくても、自分たちで「Python」を使って全ての作業を完結できるようになった。デザインの部分もデザイナーと協力して「Figma」のコンポーネントを一つ一つ整理し、マージンなどのルールを決め、テンプレート化することで、時間削減を図っている。保守・運用も担当している。アプリのリリースに3カ月かかることもあったが、現在では1カ月ほどに短縮され、簡単なものではそれよりも早い場合もあるという。

 今後は、テストやデザインの自動化を目指しており、生成AIの活用も検討したいと西田氏は考える。

一歩先行く機能を公開

 研究開発で力を入れているのは、既存の大規模言語モデル(LLM)といった技術をうまく使いながら、いかにビジネスの課題を解決できるかという部分だという。マーケットインの考え方に移ってはいるが、そればかりだと近視眼的になる可能性もあるため、先進性を示せる技術をプロダクトアウト的に一部導入することでバランスを取っているとのことだ。

 ユーザーの課題を知る手段としては、同社内のフィードバックチャンネルがある。ユーザーの声を直接聞いているカスタマーサクセス担当者など、全社員がSansan Labsに求める機能について投稿ができるようになっている。また、Sansanのユーザーコミュニティーに対して、研究開発部とAI活用について共に考える会合「Sansan User Meetup 〜Sansan×AI活用について語る会~」を定期的に開催し、ユーザーとの交流の中でアイデアを募っている。さらに、営業部の合宿に参加することで、求められる機能について情報を収集している。

 これらで言及が多い機能や課題に着目し、同社の製品ロードマップと照らし合わせ、将来的な必要性が認められれば検証する。これは、Sansan Labsで一歩先を行く機能を公開し、有用性が確認できればSansanに搭載するというのを一つの形として狙っているためだ。

 Sansan Labsで公開された機能は、ユーザーからの「もっとこうしてほしい」という声を基にSansanのプロダクトマネジャーと協力して改善された後、Sansanに搭載される。例えば、商談前の情報収集を自動化する「AI人物プロフィール」では、生成AIを使っていきたいという声があることから、Sansanへの組み込みや連携について話を進めているところだという。

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