アビームコンサルティングは、国内製造業のスマートファクトリーの取り組み状況に関する調査結果を発表した。これによると、成否が二極化している実態が判明した。
調査は、2月15~16日に国内の製造業従事者を対象にインターネットで実施し、6186人が回答した。
まずスマートファクトリーの取り組み状況では、「モデル工場を設定し、スマートファクトリーに取り組んでいる」との回答が23.5%、「モデル工場での取り組みが完了し、他工場への展開を進めている」が9.4%で、「取り組んでいない」は67.0%だった。
業種別の取り組み状況では、繊維が49.5%で最も進んでおり、以下は鉄鋼・非鉄金属・金属で35.7%、半導体・電子部品・電機部品・工作機器で37.6%、輸送機械で36.3%、ガラス・ゴム・セラミックで35.8%、鉄鋼・非鉄金属・金属で35.7%、化粧品で34.9%、石油で33.0%などだった。売上高規模別では、1兆円以上が38.6%で最も進んでおり、以下は5000億~7500億円で37.0%、7500億~1兆円で36.9%などとなった。
スマートファクトリーの取り組み状況(出典:アビームコンサルティング)
スマートファクトリーで目指す姿は、「完全自動化の実現」が45.7%で半数近くを占めており、以下は「工場データとサプライチェーンデータの連携の実現」の20.9%、「工場データと設計開発データの連携の実現」の16.7%、「匠の技術継承の実現」の13.7%が続いた。業種別の傾向では、特に石油と繊維、化粧品で「匠の技術継承の実現」が3割以上となったほか、化学と鉄鋼・非金属・金属では「工場データとサプライチェーンデータの連携の実現」が3割前後に上った。
スマートファクトリーで目指す姿(出典:アビームコンサルティング)
現在の進展状況では、うまく進んでいるとしたのが、「完全自動化の実現」で57.9%、「工場データとサプライチェーンデータの連携の実現」で55.9%、「工場データと設計開発データの連携の実現」で52.9%、「匠の技術継承の実現」で62.6%だった。一方で、うまく進んでいないとしたのは、「完全自動化の実現」で42.1%、「工場データとサプライチェーンデータの連携の実現」で44.1%、「工場データと設計開発データの連携の実現」で42.1%、「匠の技術継承の実現」で37.1%に上り、成否が二極化している実態にあった。
進展状況と経営層の関与度の相関性は、「経営層の活動理解度が高く、積極的に参加している」との回答が、うまく進んでいる企業で83.3%、うまく進んでいない企業で16.7%だった。その反面、「経営層の活動理解度は低く、積極的に参加していない」との回答がうまく進んでいる企業で20.9%、うまく進んでいない企業で79.1%に上り、経営層の積極的な参画とコミットメントがスマートファクトリーの成否に明らかに影響していることが判明した。
スマートファクトリーの進展状況と経営層の関与度(出典:アビームコンサルティング)
また、「完全自動化」と「工場データとサプライチェーンデータの連携」を目指す企業での課題には、特に人材不足と活動予算の制約が挙げられた。