富士通は、海外で承認された新薬が日本で使用できない「ドラッグロス」問題の解決を目指し、治験のデジタル化を推進するエコシステムの構築に乗り出したと発表した。国際共同治験の誘致を促進し、治験プロセス全体の課題解決を図ることで、2030年度に治験領域で200億円の売り上げを目指す。
同社は、米国のスタートアップ企業Paradigm Healthと提携し、治験計画から実行までを支援する新たなエコシステムを構築。富士通の医療データ利活用基盤「Healthy Living Platform」と、AIサービス「Fujitsu Kozuchi」を活用し、医療機関から収集した医療データを加工、Paradigmの治験プラットフォームに提供する。これにより、治験計画業務の効率化と期間短縮を実現し、医療機関が患者への治験参加勧奨を適切なタイミングで行えるようにする。
医療機関と製薬企業をつなぐプラットフォーム概要図
さらに、富士通の治験特化型大規模言語モデル(LLM)を活用し、既存の治験に関する膨大なドキュメントを、規制に準拠した形に自動作成できるサービスも提供開始。製薬企業との実証試験では、各ドキュメントの80%をLLMで自動作成でき、ドキュメント作成期間を従来の半分に削減できる見込みだ。同サービスは、Healthy Livingの「Patient-centric Clinical Trials」オファリングとして国内で提供される。
日本では、治験対象患者が複数の病院に分散しているため、治験計画に必要な症例収集に多くの時間とコストがかかる。また、薬価抑制策の影響で、国際共同治験から日本が除外されるケースが増え、ドラッグロス問題が深刻化している。今回の取り組みを通じて富士通は、これらの課題解決と日本の治験環境のデジタル化を加速させ、ドラッグロス解消に貢献するとしている。