前回の記事では、海外企業で経営変革や業務標準化のアプローチとして一般的である「ビジネスプロセスマネジメント(Business Process Management:BPM)」の基本的なポイントを紹介しました。
今、日本企業は、デジタル化対応と働き方改革の推進、少子高齢化に伴う人材不足への対策、国際競争力強化の必要性、さらにはサステナビリティー経営の要請など、目まぐるしい外的環境の変化とともに、数多くの課題にさらされています。そんな時に、全社を経営視点で俯瞰し、本当に効果的な施策を打つために有効なアプローチがBPMであること。併せて、実際に抱えていた課題に対して、BPMを基に取り組んで解決までこぎつけた事例などにも触れたことで、BPMの重要性をあらためて認識した方も多いのではないでしょうか。
また、これまで日本企業がBPMを取り入れる機会が複数あったものの、残念ながら取り組みが広がるには至らなかったことにも触れました。そんな中、昨今はBPMを推進するタイミングでもあります。今回は、BPMを実際に推進する際の一般的な方法を解説していきますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
成熟度を、継続的な改革推進を通して高めていくのがBPM
実践的な取り組み方を解説する前に、まずは前提として前回の振り返りをしていきましょう。そもそもBPMとはビジネスプロセスに着目し、継続的に改革推進を行う取り組みです。そのため、まずは自社業務の成熟度が、どの段階にあるかを理解することが求められることを前回の記事でも解説しました。
具体的には、業務が特定の個人に依存していたり、体系化ができておらずその場しのぎの対応になってしまっていたりする「成熟度1:初期」、あるいはそこから一歩進んでローカルレベルでの対応ができているものの、まだチームによってはアプローチが異なる「成熟度2:管理」段階などがあり、多くの日本企業は、この第2段階でとどまっています。
そこから成熟度が高まると、組織レベルで業務を標準化できている「成熟度3:標準化」、さらに予測やシミュレーションに基づいて改善ができる「成熟度4:予測可能」、最終的には継続的に改善ができる「成熟度5:革新的」へと進んでいきます(参考)。
この、成熟度を高度にしていくために取り組むべきなのが、BPMです。
BPMを推進する具体的アプローチ、効果的な手法の活用
BPMの手法として、筆者の所属するフリーダムや、その他のBPMの支援サービスを提供している企業が採用しているのが、「BPM-QuickWin」手法です。フリーダムでは「Business Transformation. Discovery」というサービスで提供しています。
レベル1〜5と5段階のモデリングを行いながら、自社業務の可視化を進めていきます。レベル1〜3を作成するには、上場企業であれば自社の有価証券報告書、非上場の企業であれば、事業計画書などを参考にするとよいでしょう。
具体的には、第1段階としてまず「事業構造図」と呼ばれるモデルを作成します。そもそも事業をかみ砕くと「顧客への価値を提供する単位」となります。一つの企業内であっても、その事業によって目標や目的は異なりますから、どのような構造なのかをモデリングしていくことで、これから進める取り組みの立脚点とするのです。
次の第2段階が、「戦略目標図」の作成です。戦略目標図とは、一言でいえば目的地とそこへ向かうための手段を可視化するものです。有価証券報告書や事業計画書から、事業構造図と突き合わせながら、自社のミッションやビジョンとともに、それらを実現するための課題と施策を明らかにしていきます。
例えば、何か商品があるとして、より多くの認知を得たい場合、その商品が消費者市場(BtoC)なのか、法人市場(BtoB)なのかによって、行うべき施策は異なりますよね。優先すべきが、例えば、市場の拡大なのか、顧客満足度の向上なのかによっても、最適な施策は変わるものです。このように、目的によって異なる手段を、経営者視点でブレークダウンしていくのが、この第2段階です。
ここまでを踏まえ、次に作成するのが「取引関係図」です。自社がどこから商品を仕入れて、どのような関係で最終的な顧客まで届けているのか。自社より先に販路がある場合には、顧客が代理店経由でさらに卸しているのか、はたまた直接販売しているのか——といった細かい物理的な取引関係をモデリングします。
ここまでのモデリングによって、ようやく自社内の複雑な部署同士の関係性や、業務プロセスを可視化できるでしょう。