カーボンニュートラル(脱炭素)

HPE、持続可能で責任ある事業に向けた成果を明らかに--2023年「Living Progressレポート」 - (page 2)

河部恭紀 (編集部)

2024-09-04 11:02

 低炭素で責任あるソリューションでは、効率性を高めるだけでなく、システムアプローチに重点を置き、冷却方法、排熱の再利用なども含めたIT環境やシステム全体に対する低炭素化を目指す。特に、データセンターの発熱対策として需要が高まる液冷による冷却ソリューションであるダイレクトリキッドクーリングについては300以上の特許と50年以上にわたる実績とノウハウ、製品ラインナップがあると安本氏はアピールする。

 さらに、製品のライフサイクル管理にも注力し、包括的なアプローチを取っているという。製品寿命の延伸、責任ある素材廃棄物の最小化を念頭に製品を設計することで、顧客の総保有コスト(TCO)とIT資産の環境への影響を低減する支援する。製品の環境負荷の約80%は設計段階で決まることから、ハードウェア、ソフトウェア、サービス全体において企画・開発・提供からエンドオブライフに至るライフサイクル全体の持続可能性を強化している。また、顧客による修理の容易化、再製品の販売、使用済み製品の再利用のためのアップサイクルなど、資産の寿命を伸ばす方法も複数提供することで、ITの循環型経済にも取り組んでいる。

人への投資

 人への投資で中核を成しているのは、同社のソーシャルインパクト戦略だという。人々の生活や働き方を向上させるため、自社のテクノロジーとカルチャーを活用し、コミュニティーのニーズに即した取り組みを進めている。この取り組みは、同社がグローバルテクノロジー企業として持つリソースを活用し、「ヘルスケア」「コミュニティーのレジリエンス」「多様性、平等性、包括性(DEI)と人権」の3領域にフォーカスを当てている。

 2023年には、3つの気候テクノロジーインパクトアクセラレーターと1つの人権インパクトアクセラレーターを立ち上げており、2024年にはヘルスケアインパクトアクセラレーターを立ち上げる予定。各アクセラレーターは、多様なバックグラウンドを持つ人々が率いるスタートアップ企業を支援する。

 HPEは、人的資本に関する目標として、自社を長期的に充実したキャリアを積める場所とすること、優秀な人材の登用と維持をすることを掲げる。この目標を達成するため、ニーズに合わせたキャリア開発に向け、2023年には、学習と能力開発に2000万ドル(約30億円)を投資した。さらに、2021年に導入したサイバーセキュリティのキャリアリブートプログラムを通じ、多様な背景を持つ未経験者がサイバーセキュリティ職に就くチャンスを提供している。

 リテンションとエンゲージメントにおいては、HPEの2023年の自主退職率は5.1%で、業界平均を大きく下回ったという。また、2023年、同社内でのオープンポジションの40%が社内候補者で埋まっており、このポイントは2年間で8ポイント上昇した。社員エンゲージメント率は83%で、2022年と同水準を維持している。

 HPEは、DEIをイノベーションの促進に不可欠なものと位置付けている。最新の社内調査では、自社について、多様なバックグラウンドを持つと人材が活躍できる環境を整えていると92%が回答した。2023年時点でリーダーの87%がインクルーシブリーダーシップトレーニングを終了。取締役会メンバーの54%が人種、民族、性別の多様性を示している。女性の割合は、取締役会で46%、執行委員会で50%を占める。労働力全体の多様性の進捗(しんちょく)においては、女性社員比率が全世界で0.4ポイント増加した。女性技術職は0.7ポイント、女性エグゼクティブ職は1.87ポイント増加した。

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出典:HPE

誠実な運営

 同社の企業文化は、誠実さと倫理に根差しており、これらの基準をバリューチェーン全体で実践をしているという。テクノロジーの本来の目的は可能性を解き放つことであり、その開発と利用は、世界中の人権を尊重・保護する方法で行われることが不可欠と安本氏。「私たちは、人権へのコミットメントとして、常にその水準を高め、事業活動全般に目を届かせ、 人権配慮を徹底するよう取り組んでいる」(同氏)

 AIは、変革の可能性を持つ一方で、特にプライバシーと個人の自由におけるリスクを内在していることから、同社は、責任あるAIの導入を通じて、これらのリスクを軽減することの重要性を認識している。そのため、現在、HPEは、AI倫理原則を製品開発、パートナーシップ、社内業務にわたって実践している。新しいAIの活用については、人権を中心とした評価に基づいたAIの導入プロセスも強化している。2023年には、AI倫理に関するトレーニングを受けた社員の数が倍増したという。

 サプライチェーンの責任については、2022年に立ち上げた3つのサプライチェーン責任目標に対する進捗に注力をしている。1つ目は雇用者負担の原則で、HPEのサプライヤーは、労働者が仕事を得るために支払をする必要がないことを保証する。2つ目は労働者研修で、HPEのサプライヤーは、労働者に人権に関する研修を実施する。3つ目は労働者の声で、HPEのサプライヤーは、労働者が職場改善や救済措置を妨害なく求められる効果的なプロセスを構築する。2030年までに全てのサプライヤーが対応済みとなることを目指しており、2023年の進捗としては、どの目標もおよそ半分程度のサプライヤーが対応済みとなっているという。

 今回紹介した取り組みなどを通じ、HPEは主要なサステナビリティーランキング・格付けで常に上位にランクされていると安本氏は語る。「HPEのアプローチは、現在の基準を満たすだけでなく、将来のトレンドを予測し、マテリアリティ評価に基づき優先事項を選択し、リーダーシップを発揮し続けていくこと。ステークホルダーの期待や業界の成功事例に即したLiving Progressインシアチブをこれからも積極的に推進していく」(同氏)

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出典:HPE

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