中国地方でスーパーマーケットを展開するマルイ(岡山県津山市)と日本IBMは、マルイの全店舗にIBMのAI需要予測「IBM Advanced Demand Forecast」を導入すると発表した。事前に行った実証実験で客数予測や廃棄ロス削減などに大きな成果があったという。
マルイは、岡山と島根、鳥取の3県で20店舗以上を展開する。現在は、デジタルやITを活用して業務効率化や顧客への付加価値提供を目指す「マルイ流DX」を推進中。この一環で、一部の賞味期限の長い商品については、一定の在庫量を維持する在庫型・統計需要予測方式の自動発注を行っている。ただし、気象条件や販売促進の結果で大きく需要が変化し、単品販売の動向が影響する賞味期限の短い商品では実施できないなどの課題を抱えていた。
このため両社は、日本IBMの流通業向けデジタルサービスプラットフォーム「IBM Digital Services Platform」を通じて、2023年11月~2024年2月にIBM Advanced Demand Forecastを使った需要予測の実証実験を行った。天候や催事といった店舗の売上影響要因のコーザルデータ、顧客の販売データの傾向分析を導入し、全商品一律で運用せず、最適な予測モデルを商品ごとに自動で適用する予測手法を取り入れた。
その結果、月間の客数予測精度が店舗平均で90%を超える高い精度を達成し、販売機会の向上と廃棄ロスの削減につながる効果を確認した。さらに、2024年3~7月には一部店舗で実運用し、1店舗当たりの発注時間が50%削減される効果も認められた。こうした成果を踏まえて、9月からAI需要予測を全店舗に正式導入する。
2023年11月~2024年7月の実証実験の概要と成果は以下の通り。
実証の概要
- 対象カテゴリー:和日配(豆腐、納豆など)、洋日配(牛乳、デザートなど)
- 実施店舗:ノースランド店、総社店、湯郷店、両三柳店、安倍店の5店舗
- 使用データ:店舗情報、販売実績、商品情報、販促情報、コロナ情報、気象情報、カレンダー情報
定量効果
- 販売数予測精度:和日配96.3%
- 売上前年比:和日配102%
- 月額ロス率前年比:和日配97.5%、
- 発注時間:各カテゴリーそれぞれ50%削減
定性効果
- 担当者の公休前の発注忘れの防止や従業員の休暇中の心労削減
- 定型業務量削減による店舗スタッフのモチベーションアップ
- 発注業務削減時間を高付加価値のサービス提供時間への変換による店舗活性化
- 欠品状況の可視化、定番商品の品ぞろえの改善
マルイと日本IBMは今後、部位が多く予測の難しい精肉や総菜、店舗内ベーカリーへのAI需要予測の展開と製造計画への利用を検討している。