多くのユーザーが利用する業務アプリケーションをグローバルに展開するSaaSベンダー大手が、ここ2週間ほどに相次いでサービスの機能強化を発表した。各社とも強化のキーワードは「AIエージェント」だ。ただ、既存ユーザーにとってはインパクトが大きいとみられるものの、今回の強化を新規ユーザー獲得につなげられるか。本格的なSaaS市場の拡大はこれからだけに、ベンダー各社の力強いアピールに注目したい。
SaaS大手5社がAIエージェント搭載を発表
それぞれの業務アプリケーションにAIエージェントを搭載して使い勝手や生産性を大幅に向上させたとして、Microsoft、ServiceNow、Oracle、Salesforce、WorkdayといったSaaSベンダー大手5社が、ここ2週間ほどに相次いでサービスの機能強化を発表した。以下、各社の発表からAIエージェントに関する内容の要点を挙げておこう。発表日時はいずれも米国時間である。
Microsoftは9月16日、「Microsoft 365 Copilot」のAIエージェント機能「Copilotエージェント」を同日から提供すると発表した。Copilotエージェントはビジネスプロセスを自動化および実行するように設計されたAIアシスタントで、人間と協力し、人間のために作業を行う。エージェントは単純なプロンプトに応答するだけのものから、反復的な作業を代行するもの、より高度な完全自律型のものまで多岐にわたる。Copilotエージェントはそうしたエージェントの能力を業務フローに直接取り入れることで、これら全て、さらにはそれ以上のことを行えるようになるとしている(図1、関連記事)。
図1:Copilotエージェントを搭載したSharePointの紹介(出典:Microsoftの発表資料)
ServiceNowは9月10日、同社のPaaSである「Now Platform」に搭載して同社の各SaaSで利用できるAIエージェント機能「ServiceNow AI Agents」を11月から提供すると発表した。Now Platformから同社のSaaSであるIT管理、カスタマーサービス、調達、人事、ソフトウェア開発などのユースケースで24時間365日の生産性を大幅に向上させることが目的だ。このアプローチは、AIエージェントが従業員や顧客とどのように協力するかを再定義することで、AIを人々のために機能させるものだとしている。また、ServiceNow AI Agentsは高度な推論を使用し、Now Platformを通じて企業間データに基づいているため、よりなじみのあるプロンプトベースのアクティビティーから深いコンテキスト理解へと進化し、堅固な監視とカバナンスを実現できるとしている(関連記事)。
Oracleは9月11日、「Oracle Fusion Cloud Applications Suite」内で利用できる50以上の役割別のAIエージェントを発表した。AIエージェントが日常的に繰り返し行う業務の遂行を支援することで、ユーザーはより戦略的な業務や取り組みに時間を費やせるようになる。同社が提供するAIエージェントは、エンドツーエンドの業務プロセスを自動化して、個別化されたインサイト(洞察)、コンテンツ、推奨を特定の業務プロセスの文脈に沿って、ユーザーの専門的な役割を支援する形で提供し、ユーザーがより効率的に業務を遂行できるようにするという。この新たなAIエージェントにより、財務、サプライチェーン、人事、営業、マーケティング、サービス全般にわたる業務の進め方を刷新し、新たな水準の生産性を実現できるとしている。