パナソニック、AIアノテーションの自動化でFastLabelと協業

大河原克行

2024-09-30 06:00

 パナソニック ホールディングスは、パナソニックグループのマルチモーダル基盤モデル「HIPIE」の開発効率を高めるためFastLabelと協業すると発表した。HIPIEとFastLabelの「Data-centric AI プラットフォーム」と統合し、自動アノテーションモデルを構築するとしている。

 同社は、これによりHIPIEでのAIの開発効率を向上させ、アノテーション(ここではAI学習のデータに注釈を付与すること)に関わるコストの削減と高精度化の両立を目指す。パナソニックグループで2024年11月から段階的に導入を進めるという。HIPIEについては、大規模言語モデル(LLM)をストックマークと共同開発する「Panasonic-LLM-100b」に置き換えて社内データなどを反映させ、AI開発の高度化を図ることも明らかにした。

連携イメージ
連携イメージ

 モデルを学習せずにプロンプト入力だけでアノテーションを自動化できるHIPIEと、プロンプト内にアノテーションを行いたい物体名を入力するだけで自動的に該当内容を検出できるようにするData-centric AIプラットフォームの連携により、パナソニックグループ全体のAI開発の効率化、高度化を実現し、グループが推進する「Scalable AI」と「Responsible AI」の取り組みに貢献するとしている。

 具体的には、例えば、HIPIEによって冷蔵庫内のトマトを事前学習がなくても、「これがトマトである」と指定すればトマトとして認識される。その作業にData-centric AIプラットフォームによるユーザーインターフェース(UI)やデータ管理の仕組みを用いることで、ワークフローが劇的に改善される。これまで手作業だったアノテーションを自動化でき、1物体当たり60秒を要した作業が5秒に短縮できるといった効果がある。この例では、冷蔵庫AIカメラの学習データの構築を効率化できるようになる。

冷蔵庫内で検知したモノのアノテーション適用の効果イメージ
冷蔵庫内で検知したモノのアノテーション適用の効果イメージ

 また、特定の部品の傷や摩耗を画像からAIで判断するケースでは、従来は熟練者のノウハウが必要だが、Data-centric AIプラットフォームのUIを用いて、AIの専門知識を持たない現場担当者でも分析対象データに特定の情報やラベルを付ける作業ができる。こうしたアノテーションは、ツールが使いにくいとの指摘も多いが、Data-centric AIプラットフォームはその課題を解決でき、アノテーション作業にAIエンジニアの工数を割きたくないというケースにも貢献する。

 パナソニックグループもアノテーションのためのツールを開発していたが、今回はFastLabelのData-centric AIプラットフォームを採用した。モデル学習時間を約30%削減でき、今後さらに効率化が進めることができると見ている。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    ChatGPTに関連する詐欺が大幅に増加、パロアルトの調査結果に見るマルウェアの現状

  2. セキュリティ

    迫るISMS新規格への移行期限--ISO/IEC27001改訂の意味と求められる対応策とは

  3. セキュリティ

    警察把握分だけで年間4000件発生、IPA10大脅威の常連「標的型攻撃」を正しく知る用語集

  4. セキュリティ

    いま製造業がランサムウェアに狙われている!その被害の実態と実施すべき対策について知る

  5. セキュリティ

    ランサムウェア攻撃に狙われる医療機関、今すぐ実践すべきセキュリティ対策とは?

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]