NTTら、道路橋の点検にドローンと画像AIを活用--熊谷市で実証実験

加納恵 (編集部)

2024-10-04 15:39

 NTTとNTT e-Drone Technology(NTT e-Drone)、熊谷市は10月3日、ドローンと画像認識AIを組み合わせ、道路橋の点検作業の効率を上げる実証実験を開始すると発表した。維持管理コストの縮減に結びつける。

ドローンと画像認識AIを用いた道路橋の検査
ドローンと画像認識AIを用いた道路橋の検査

 道路橋は設備の老朽化が社会問題になっており、劣化要因の1つは鋼材の腐食。設備管理者は腐食した箇所の鋼材の厚さを把握することが重要だが、検査員が目視により設備の外観に発生した腐食を確認しているため、腐食の深さ(腐食による鋼材断面の欠損量)が把握できないという。

 腐食が著しい箇所では、超音波を用いて鋼材の厚さを計測する方法があるが、超音波を発生、または受信する振動子を組み込んだセンサーである探触子を計測箇所に当てる必要があり、設備全体では多くの作業コストがかかるという課題があったという。

 実証実験では、ドローンによって道路橋の画像を撮影し、画像認識AIを用いて鋼材の腐食検出と腐食深さの推定、作業能率や技術精度を検証するとのこと。ドローンによる画像撮影と画像認識AIによる検査の作業時間のほか、画像認識AIによって検出した腐食領域と専門の検査員が判断した腐食領域の一致率なども確認する。

 実験期間は2024年9月2日~2025年2月28日まで。ドローンによる道路橋の撮影は、高度な操作技術が必要になるほか、橋の形状により飛行可能な空間が異なるため、難易度が高いとのこと。加えて、同一の腐食を遠写した場合と接写した場合に腐食箇所の画素分解能に差異が生じ、腐食深さの推定精度に影響を与えることが想定される。

同一の鋼材腐食に対して撮影距離を変えた際の画素分解の違い
同一の鋼材腐食に対して撮影距離を変えた際の画素分解の違い

 これらの課題をクリアするため、粗い画素分解能の画像からでも腐食深さを推定できるように画像認識AIをカスタマイズすると同時に、腐食深さの推定精度と画素分解能の関係性を明らかにし、運用時のドローンでの撮影条件(撮影距離・撮影機材など)を定め、ドローンを使った道路橋の検査方法の実用化を目指す。

 今回の実証実験では、画像認識AIによる腐食検出と腐食深さの精度検証、画像認識AIのカスタマイズ、超音波装置による腐食箇所の鋼材断面の欠損量計測をNTTが担い、NTT e-Droneがドローンと画像認識AIを用いた点検作業の能率検証、ドローンによる道路橋の撮影と飛行時の撮影条件の検討などを担当。熊谷市は、実証実験場所と道路橋の点検結果を提供する。

 実証実験結果から実用性を評価し、2025年度に点検支援技術として実地導入を予定しているとのこと。道路橋のみならず、鉄塔、ガードレールなど、インフラ設備へと使用する場所を拡大していくという。

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