関西電力送配電は、富士通の「Fujitsu Data Intelligence PaaS」を導入し、電力供給の安定化と効率化に向けた各種施策の有効性を確認した。同社は、2025年3月の稼働を目指している。富士通が発表した。
この取り組みでは、Fujitsu Data Intelligence PaaSで関西電力送配電が保有する電力供給に関連する各種データを収集・蓄積・可視化し、電力供給のさらなる安定化や効率化を目指す。現場設置の設備のエラー発生時に迅速な検知と調査、対処を可能とするほか、次世代スマートメーターに搭載される「遠隔アンペア制御」機能で、計画停電を回避した際の効果算定の検証も実施している。これらを通じて、次世代スマートメーターの本格導入に向けて電力のレジリエンス(回復力)の強化に取り組み、電力使用データの活用で業務の高度化と意思決定の迅速化を実現していくという。
現場設置設備のエラー業務の現在と今後
設備のエラーへの対応では、これまで帳票出力していたエラー情報をFujitsu Data Intelligence PaaSで活用する。スマートメーターから30分ごとの電力使用データを抽出し、設備や工事情報ともひもづけを行って、故障の恐れのある対象設備の状況をダッシュボードで可視化した。従来は、エラーを検知してから現場担当者がエラーの内容および複数のシステムとの照らし合わせにより調査を行い、必要に応じて現地へ出向していた。Fujitsu Data Intelligence PaaSの活用でひもづけられた情報から設備故障の兆候などを効率的に捉えることができるようになる。
エラー検知ダッシュボードの画面イメージ
また、現場への出向実績もFujitsu Data Intelligence PaaSに入力し、データとして蓄積することでエラーの傾向や分析なども可能といい、エラー抽出の精度を継続的に向上させることができる。2024年6月に調査業務の効率化に向けてエラー帳票を可視化するアプリケーションのパイロット版を開発完了しており、現在は2025年3月の本稼働を目指している。
さらに、次世代スマートメーターの遠隔アンペア制御機能の利用に向けた取り組みでは、関西電力送配電が管轄する約1300万件の中からランダムに選んだ約10万件のスマートメーターから30分ごとに取得した電力使用データを用い、天候など諸条件の過去類似日の需要実績を基に、次世代スマートメーターの普及率や使用可能電流値の上限となるアンペア制御値を可変しながら電力使用量の削減効果を可視化するアプリケーションを3カ月で試作。その効果を試算し、時間帯ごとのエリア全体の抑制効果と、需要者に節電協力を求める必要のある時間帯や削減量などの影響範囲を効率的に確認することができたとする。
遠隔アンペア制御機能による制御値と抑制効果のイメージ
遠隔アンペア制御機能は、需給バランスの回復が見込めない時に、大規模停電を回避する最終手段として実施する計画停電に代わる新たなスキームとして期待され、次世代スマートメーターへの導入が見込まれている。