本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、Dell Technologies グローバルCTO 兼 CAIOのJohn Roese氏と、ヴィーム・ソフトウェア 執行役員社長の古舘正清氏の「明言」を紹介する。
「Dellはこれまで40年、今のAIの基盤となるテクノロジーをつくってきた」
(Dell Technologies グローバルCTO 兼 CAIOのJohn Roese氏)
Dell Technologies グローバルCTO 兼 CAIOのJohn Roese氏
米Dell Technologies(以下、Dell)の日本法人デル・テクノロジーズは先頃、年次イベント「Dell Technologies Forum 2024-Japan」を都内ホテルで開催した。この機に米国本社から来日したグローバルCTO(最高技術責任者)兼 CAIO(最高人工知能責任者)のJohn Roese(ジョン・ローズ)氏は、基調講演およびその後にメディアとアナリスト向けに会見を行った。冒頭の発言はその会見の場で、基調講演にビデオで登場したDell会長 兼 CEO(最高経営責任者)のMichael Dell(マイケル・デル)氏の発言を受けて「DellとAIの関係」について聞いた筆者の質問に答えたものである。
Roese氏は基調講演でAIについて、「これまで人がやっていた仕事を機械でやれるようにするテクノロジーだ。近いうちに人がやっていた3割の仕事を機械がやるようになるとの見方もある。さらに、デジタル上の仕事はAIエージェントが全てやってくれるようになるだろう。Dellは今年で創業40周年を迎えたが、私はAIがこれまでで最大のインパクトを超スピードでもたらしたテクノロジーだと確信している」と話した。
「AIの対応はスピードの速さが重要」と強調(出典:「Dell Technologies Forum 2024-Japan」の基調講演)
Roese氏のその他のスピーチをはじめ、基調講演の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここではRoese氏の冒頭の発言に注目したい。
発端となったビデオで登場したDell氏の発言は、次の通りだ。
「企業や社会を変えるような大きな力を持つAIを、多くのお客さまが活用できるようにご支援するのが当社の使命だ。当社はこのAI時代のために設立されたと言っていい。当社にとってAIは、これまで積み上げてきたテクノロジーを次なるステージに引き上げるものだ」
筆者は、「当社はこのAI時代のために設立された」とのDell氏の発言が非常に印象に残った。それは、同社の創業時を取材したことがある筆者の特別な感情かもしれないが、創業者であるDell氏がなぜそう思うのか、その真意を聞いてみたくなった。
とはいえ、Dell氏は来日していないので、同社のCTOを長らく務めているRoese氏に会見の質疑応答で、Dell氏の真意を代弁してほしいと頼んだところ、次のように話した。
「当社はお客さまがAIを活用する全ての領域においてご支援していくべく尽力している。そんな活動ができるのは、創業してから40年、今のAIの基盤となるテクノロジーを生み出し、普及させてきたという当社ならではのプロセスがあるからだ。これまで懸命にやってきたことは、全てこれからのAI時代に向けた活動だったとの思いが『このAI時代のために設立された』という表現になったのだろう」
さらに、こう続けた。
「その表現についてもう1つ挙げておきたいのは、当社はテクノロジーとしてオープンなアーキテクチャー、ビジネスとしてオープンなエコシステムを最も重視し、追求してきたという点だ。それはすなわち、AIについてもオープンに進めなければならないというメッセージを込めていると言っていい。当社がそれをリードしていきたいという意欲の表れだ」
何やら思いを巡らしながら話すRoese氏の姿が印象的だった。