本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、伊藤忠テクノソリューションズ 代表取締役社長の新宮達史氏と、Wrike CEOのThomas Scott氏の「明言」を紹介する。
「数年先を見据えて4つのテクノロジーにフォーカスしていく」
(伊藤忠テクノソリューションズ 代表取締役社長の新宮達史氏)
伊藤忠テクノソリューションズ 代表取締役社長の新宮達史氏
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は先頃、年次イベント「CTC Forum 2024」を都内ホテルで開催した。新宮氏の冒頭の発言はその基調講演で、「高度AI」「データ&アナリティクス」「クラウドネイティブ」「セキュリティー」の4つを、数年先を見据えたキーテクノロジーとしてフォーカスしていることを述べたものだ。
基調講演での新宮氏のスピーチで筆者が注目したのは、「Future of Technologies~お客さまと未来を拓く技術を探索する」とのテーマで、10年先を見据えた「技術領域・分野」と「産業別インパクト」について記された図1の内容だ。この図がすなわち、CTCにおけるFuture of Technologiesの全体像である。
図1:CTCにおける「Future of Technologies」の全体像(出典:「CTC Forum 2024」の基調講演)
図の左側に記されているのが技術領域・分野で、A版の「IT中心」だけでなくB版の「インダストリアルテクノロジー」の領域・分野まで探索を広げている。
IT中心の領域・分野は、「AI・ブロックチェーン」「量子・エレクトロニクス」「サイバーフィジカルシステム・DX(デジタルトランスフォーメーション)」「サイバーセキュリティー」「マン・マシン・システム」の5つの領域とそれらを細分化した47分野からなる。
インダストリアルテクノロジーの領域・分野は、「先端製造」「バイオテクノロジー&ライフサイエンス」「材料」「航空・宇宙」の4つの領域とそれらを細分化した60分野からなる。
そして、これらの技術が産業に与えるインパクトについて考察しており、その対象として図に示されているように11の産業を取り上げている。これがすなわち、ITサービス事業者の中でもとりわけカバーする範囲が広いCTCの事業領域である。
新宮氏はまた、数年先を見据えたキーテクノロジーとして先述した4つを挙げた。それぞれのキャッチフレーズとして、高度AIは「AIで、未来を共創する」、データ&アナリティクスは「次の打ち手は、データに聞く」、クラウドネイティブは「ビジネスに、いま必要なアジリティを」、セキュリティーは「総合力で守る。対応力で支える」を打ち出した(図2)。
図2:CTCが数年先を見据えて挙げた4つのテクノロジー(出典:「CTC Forum 2024」の基調講演)
この4つのテクノロジーについて同氏は、「AIの活用はもはや言うまでもなく、AIが適切な回答を出すために必要となるデータとアナリティクス、それらをスピーディーに実行するためのクラウドネイティブ、その環境の安全性を担保するセキュリティーにフォーカスするということだ」と、それぞれ関連していることも説明した。
こうした将来を見据えたキーテクノロジーについては、同じITサービス事業者ではNTTデータや野村総合研究所(NRI)なども考察したレポートを毎年まとめており、IT分野の指針として注目されている。
CTCは年次イベント開催と同じタイミングで、AI自身が業務要件の理解や判断を行って最適な回答や作業を行うAIエージェントの構築支援サービスを提供開始するとも発表した。AIエージェントは今、ホットな話題となっており、新宮氏が先に述べた高度AIへのステップとなるテクノロジーだ。この発表にもキーテクノロジーへのフォーカスぶりがうかがえる。ITサービス事業者として、自らが掲げたキーテクノロジーにどう取り組み、どんなソリューションを生み出すか。注目していきたい。