キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は10月28日、2024年の取り組みと2025年に向けた事業戦略を紹介した。顧客企業のシステムマイグレーションを中核にしつつ、既存のアジャイル開発プラットフォームやスマートサプライチェーン管理(SCM)にも継続して注力するという。
同社は2025年までに全社の売り上げを1.5倍(2021年比)、サービス提供モデルの売り上げを2倍(同)、顧客企業のマイグレーションを支援する人材も5倍(同)を目指す。さらに2024年中は「マイグレーション事業の強化を図っていく」と同社 代表取締役社長の金澤明氏は説明する。
左からキヤノンITソリューションズ ビジネスソリューション第二開発本部 本部長 山口富氏、同社 代表取締役社長 金澤明氏、同社 常務執行役員 デジタルイノベーション事業部門担当 村松昇氏
多角的にITソリューションを提供するキヤノンITSだが、デジタルイノベーション事業部門では、業務のDXを推進する「デジタルビジネス」、事務管理部門をDXする「SuperStream」、企業間商取引を担う電子データ交換(EDI)やオンプレミスの既存システムをマイグレーションする「ビジネスソリューション」を手掛けてきた。特に、マイグレーションビジネスは30年の経験を積み重ねている。
他方でメインフレーム利用企業の課題は枚挙にいとまがない。同社が企業76社に対しメインフレームの維持・運用費用を尋ねたところ「ハードウェア費用だけで月額約3800万円、ソフトウェアライセンス費用で月額約2809万円。年額にすると7億9464万円にもおよぶ。だが、134社の調査結果によれば、メインフレームを維持運用する企業の担当者は平均25.9人、51人以上の割合は21.6%」と厳しい状況であると同社 常務執行役員 デジタルイノベーション事業部門担当の村松昇氏は指摘する。経済産業省が警鐘を鳴らす2025年まで、もう時間がない。
このような背景から、キヤノンITSはGnuCOBOLでメインフレームを移行する「リホスト」、COBOLをJavaに変換する「リライト」、業務プロセスの見直しを含めてCOBOLをPure Javaへ移行する「リビルド」の三手法を提供しているが、同社が推奨しているのはリホストだ。
村松氏は、「われわれも研究を重ねているが、Javaへの変換は難しい。リホストは移行コスト・期間・リスク&難易度の面で効果的。移行実施時こそコストが発生するものの、数年で維持コストも減り、3年目以降は戦略的な投資」が有効になると説明した。同社はマイグレーション事業を通じて企業のDX推進準備を整える「DX Ready」の実現や2027年売り上げ目標400%(2023年実費比)を目指しながら、生成AIの研究・活用に注力する。
リホストの効果
キヤノンITSが99社を調査したところ、マイグレーションの検討段階・未検討は65%に達した。同社はマイグレーション事業を強化するため、オンライン基盤ソフトウェアの提供と富士通メインフレーム向けツールの機能拡充を行う。
まずオンライン基盤ソフトウェアは、メインフレームの制御機能を代替するプラットフォーム。メインフレームのオンラインプログラムに手を加えることなく、オープン環境でオンライン処理を実現できる。後者は富士通のメインフレーム用OSであるMSP(Multidimensional System Products)向け変換ツール。富士通COBOLデータベースとオンラインインターフェースの変換や、富士通COBOLのデータベースアクセス命令、各種条件などをパターン解析し、オープン環境のデータベースを活用するアクセスモジュール生成など多くの機能を備える。
キヤノンITS ビジネスソリューション第二開発本部 本部長の山口富氏は「JCL(ジョブ制御言語)の変換など個々のツールはありつつも、オープンシステムの構成をさらに高めるため、特有の機能に広く対応する機能拡充を図った」と概要を説明した。
オンライン基盤ソフトウェアの概要
富士通メインフレーム向けツールの主な機能強化ポイント