トヨタ自動車とNTTは10月31日、交通事故ゼロ社会の実現に向けて「モビリティAI基盤」を共同で構築すると発表した。通信基盤・AI基盤・計算基盤の統合によってヒト・モビリティー・インフラを連携させ、交通事故のない安全で持続可能なモビリティー社会の実現を目指す。
交通事故をなくすためには、自動車の運転支援技術をデータに基づく形で高度化させたり、将来的には自動運転技術を開発したりすることが必要となる。また、ヒト・モビリティー・インフラのそれぞれが絶えず連携していることも重要となるという。
トヨタでは、安全と安心を優先したソフトウェア定義型車両(SDV)の開発を進めている。SDVの進化に伴い、高速で高品質な通信インフラや、大量のデータを効率的に処理するAI基盤や計算基盤の構築が求められていた。
モビリティAI基盤は、「分散型計算基盤」「インテリジェント通信基盤」「AI基盤」で構成される。
分散型計算基盤では、AIで大量のデータを分析・処理するためのデータセンターを、「IOWN」の光通信技術を使って分散配置する。再生可能エネルギーが豊富な地域に設置することで、電力の地産地消を実現し、分散したデータセンターやAIの連携・処理における高い電力効率を実現する。これにより、データ分析・処理に必要な膨大な電力のグリーン化を推進する。
インテリジェント通信基盤は、市街地や地方・郊外などのさまざまな交通環境・状況に適した切れ目ない通信を活用し、ヒト・モビリティー・インフラを協調させる仕組みを構築。高い信頼性と大容量データの低遅延通信を実現する。
AI基盤は、上述の2点を土台として、ヒト・モビリティー・インフラからの多様なデータを学習・推論する「モビリティAI」を実現するものになる。
モビリティAI基盤は、モビリティー分野の標準化を目指しており、両社だけでなく、交通事故ゼロ社会の実現に共感する産官学のパートナーにも広く活用されることを想定している。
今後、両社は2030年までに5000億円規模の投資を予定している。2025年からモビリティAI基盤の開発を開始し、2028年ごろからはさまざまなパートナーと協力して社会実装を進め、2030年以降の普及拡大を目指す。
交通事故ゼロ社会のイメージ