日本企業はクラウドサービスを活用できているか。オンプレミスからクラウドへの移行は着実に進みつつあるが、クラウドのメリットを本当に享受できているか。また、享受できる体制を企業として整備しているか。こうした疑問に対するGartnerの提言から、どう対処すべきかについて考察したい。
直近の普及率「SaaSは38%」「IaaS・PaaSは23~24%」
「2025年、企業はクラウド戦略を総点検する必要がある」
写真1:ガートナージャパン ディスティングイッシュトバイスプレジデントでアナリストの亦賀忠明氏
こう語るのは、ガートナージャパン ディスティングイッシュトバイスプレジデントでアナリストの亦賀忠明氏だ。同社が10月28~30日に都内ホテルで開いた「Gartner IT Symposium/Xpo 2024」でのクラウド最新動向をテーマにした講演で、クラウドを利用する企業に向けてこう警鐘を鳴らした。どういうことか。今回はこの亦賀氏の話を基に、「日本企業における2025年のクラウド戦略」について考察したい(写真1)。
まずは、Gartnerが4年ごとに定点調査している日本企業のクラウドの形態別導入状況において、2024年の最新データを加えたのが、図1だ。
図1:日本企業のクラウドの形態別導入状況(出典:「Gartner IT Symposium/Xpo 2024」亦賀氏の講演資料)
亦賀氏は図1のグラフの動きについて、「クラウドの導入は総じて着実に進んでいる。一方で、オンプレミスもそんなに極端に減少しているわけではない。それもあってオンプレミスとクラウドが混在したハイブリッドがこの4年で大きく伸長したのも印象的な動きだ」と述べた。
このグラフから、直近の普及率として「SaaSは38%」「IaaS・PaaSは23~24%」といったところを頭に入れておきたいものだ。
このように着実に普及しつつあるクラウドだが、同氏は2024年のこれまでの動きを振り返って、「純粋にクラウドの動きだけを見ると、それほど勢いのあった年とは言えない」とし、「そうした2024年からのトレンドで、2025年も同じことを継続している企業や組織ではリスクが蓄積されていく」と警鐘を鳴らした。
なぜ、2024年のクラウドの動きはそれほど勢いのあった年とは言えないのか。亦賀氏は、「(ユーザーである)企業では従来と同様、クラウド導入における初期段階にとどまっているところが目立った。一方、クラウドへの移行を促進すべきハイパースケーラーが生成AIばかりに注力していたことも影響した」との見方を示した。
その上で、同氏は「そうした2024年からのトレンドで、多くの企業が『クラウドを適切に推進しないリスク』を回避するように動いている。このままでは大変なことが起きてしまう。トレンドだけで動くのではなく、クラウドならではの新しい原理原則をしっかりと自らの戦略に組み込むことが重要だ。そうして2025年は、しっかりとしたクラウド戦略を打ち立てて実践してもらいたい」と力を込めた。
亦賀氏の発言について筆者の解釈を付け加えておくと、「企業では従来と同様、クラウド導入における初期段階にとどまっているところが目立った」というのは、クラウドの導入に当たって相変わらず机上の議論ばかりを続けているところが少なくないことや、IaaSの場合にまず既存のオンプレミスシステムをそのままクラウドに上げて(リフト)、その後にクラウドのメリットを本格的に享受できる形に移行(シフト)する「リフト&シフト」に取り組んでいる企業が多いが、現状では「リフト」にとどまって停滞しているところが少なくないとのと捉え方だろう。
そうしたことも含めて、2025年に回避すべき「クラウドを適切に推進しないリスク」とは何か。そして、それを踏まえて2025年に採るべき「クラウド戦略」とは――。以下に、亦賀氏によるGartnerとしての見解と提言を挙げていこう。