今後は、AIを中核としたテクノロジーのコンバージェンスが新たな需要を次々と生み出すことで、斬新なビジネスモデルが量産されることが予想されます。企業は、競争優位性を獲得するための環境を整備し、コンバージェンスを巧みに応用できる組織能力を具備することが求められます。
コンバージェンスを巧みに応用する能力
本連載の前回「AIコンバージェンス時代の競争優位性--AI活用力は差別化要因となるのか」では、AIを新規価値創出の分野で最大限に活用することに加えて、人間にしかできないホスピタリティー、リーダーシップ、クリエーティビティーの分野で差別化要因を作り出し、伸ばすことが重要であると述べました。人間にしか発揮できないこれらの3つの能力はいずれも重要ですが、中でも「クリエーティビティー」は、多くの業種において競争優位性を大きく左右すると考えられます。そして、AIを新規価値の創出に活用する際にも、人間のクリエーティビティーは欠かせないものとなります。
今後は、AIを中核としたテクノロジーのコンバージェンスが新たな需要を次々と生み出すことで、斬新なビジネスモデルが量産され、そのうちの幾つかが成功するでしょう。これによって多くの産業分野で参入障壁が著しく下がり、栄枯盛衰がより激しくなることが予想されます。従って、企業は同じことを効率的に行うだけでは競争に勝てず、イノベーションによって常に新たな価値を生み出し続けなければならないことを意味します。
多くの企業では、デジタルリテラシー向上のための研修やリスキリングのさまざまな施策により、従業員の生産性や創造性を向上させる取り組みを行っていますが、従業員一人一人がスキルアップするだけでは不十分と言わざるを得ません。
かつては、一人の天才が革新的な製品を発明したり、斬新なビジネスモデルを考案したりして成功を収めることができましたが、技術革新が著しく不確実性が高い時代においては、それを一人の天才が担うことは困難といえます。従って、多様な知識や能力を持った社内外の複数の人材が、知恵を持ち寄り互いに意見をぶつけ合いながらアイデアを創出し、実現に向けてイノベーションの種を育てていくことが求められます。
さらに、デジタルテクノロジーをいち早く取り入れたり、テクノロジーのコンバージェンスを誘発して新たな価値を創出したりするには、さまざまな知識や異なる業務分野の経験を融合させることが有効となるでしょう(図1)。
従って、これからの企業には、テクノロジーのコンバージェンスを活用してイノベーションを創出し、それを巧みにビジネスに応用する組織能力としてのクリエーティビティーとそれを可能にする環境が必要であり、それこそが重要な競争力の源泉となると考えられます。
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