富士通は11月26日、自治体の施策をデジタルツイン上で再現し、効果を最大化する技術「Policy Twin」を開発したと発表した。
Policy Twinは、過去の施策と実績データを基に、デジタルツイン上で新たな施策候補を生成し、その効果をシミュレーションできる技術だ。経済性や健康改善など、複数の目標指標を同時に改善する施策の立案を支援する。これにより、施策立案の時間短縮や合意形成の促進が期待できる。また、複数の自治体で同技術を活用することで、施策のベストプラクティスの導出や、自治体間での施策の相互参照、施策の標準化への応用も見込まれる。
実際に予防医療事業で同技術を検証したところ、保健指導の提供リソースの要件を満たしつつ、保健指導による医療費の節減効果と健康指標の改善効果をともに前年度の約2倍に向上させる施策候補を導出できた。
文書化された施策情報を機械可読なフロー形式に変換する例(提供:富士通)
Policy Twinによるデジタルリハーサルの概要(提供:富士通)
Policy Twinで効果的な施策を探索する流れは、(1)施策をフロー形式に変換、(2)新たなフロー候補の生成、(3)サービス提供のシミュレーション――という手順になる。
(1)では、文書化された施策情報を、大規模言語モデル(LLM)などを用いてコンピューターが読み取れるフロー形式に変換し、サービスを提供する条件や対象者を選ぶ基準を明確にする。
(2)では、実績のある施策を参考に、条件分岐と提供サービスを組み合わせて新たなフロー候補を作成する。実証経済学の資源配分理論を応用し、リソースの制約を考慮する。
(3)では、フロー候補に基づき、人の行動選択を考慮した機械学習モデルでサービス提供をシミュレーションする。各指標やコスト、リソースなどの変化を予測し、複数のフロー候補を比較、評価し、最適な施策を選択する。
富士通は、複雑な社会課題の解決を支援するために、AIを含む情報通信技術に最新の行動経済学の知見を取り入れた技術群である「ソーシャルデジタルツイン」の研究開発を行ってきた。その上で、人々の行動をデジタルツイン上に高度に再現し、施策の効果や影響を事前に検証可能とする「デジタルリハーサル」技術の開発に取り組んでいる。
Policy Twinは、同社のオンラインプラットフォーム「Fujitsu Research Portal」で技術公開され、2025年度中に「健康医療EBPM(Evidence Based Policy Making)サービス」として提供開始される予定。さらに、「Uvance Wayfinders」のコンサルティングサービスでも活用していくという。