リカーリング率向上が生き残りの絶対条件に
もう1つは、富士通が先頃、投資家やアナリスト向けに開いた「IR Day 2024」でのビジネスモデルの転換を巡る話だ。同社がフロー型からストック型へビジネスモデルの転換を図るために注力しているのが、DX支援サービスの事業ブランド「Fujitsu Uvance」だ。Uvanceの事業責任者はビジネスモデルについて、次のように述べている。
「Uvanceはコンサルティングから始まり、1対n(複数)のお客さまに対応できるようなクラウドベースのオファリングを展開することによって、最終的にはお客さまの重要業績評価指標(KPI)を達成するまで継続的に価値を提供し続けていく。そのために、機能を拡張し、お客さまの使い勝手を高めていく。こうしたアプローチによって、お客さまの要件定義が難しい領域でのベストプラクティスについても迅速に提供し、積極的に横展開を図っていく。また、提供した後も継続的に最新のテクノロジーを使って新たな価値をお届けする。継続的にサービスを提供するためにリカーリングモデルを広げていきたいと考えている」(図3)
図3:Fujitsu Uvanceのビジネスモデル(出典:富士通「IR Day 2024」説明資料)
富士通はUvanceの事業インパクトとして図3の下段に記した4つを挙げており、その1つに「リカーリングによる収益基盤の拡大」がある。そして、リカーリングについて、2023年度実績で21%だったリカーリング率を、2024年度には35%、2025年度(2026年3月期)には45%に高めていくことを明言した。つまり、Uvanceが広がっているかどうかのバロメーターはリカーリング率の向上で見ることができる。
なお、IR Day 2024で説明があった富士通のUvanceによるビジネスモデル転換の取り組みは、2024年9月19日掲載の本連載記事「富士通はビジネスモデルを変えられるか」を参照していただきたい。上記の事業責任者のコメントも同記事から抜粋したものである。
こうした捉え方は、富士通と同様にNECの「BluStellar」や、Hewlett Packard Enterprise(HPE)の「GreenLake」、Dell Technologiesの「APEX」といったDX支援サービスの事業ブランドにも当てはまる。さらに、これまでシステムインテグレーション(SI)を生業にしてきたITサービスベンダーは今後、リカーリング率を上げていけるかが生き残りの絶対条件になっていくだろう。
筆者がこうした動きの中で訴えたいのは、ビジネスモデルの転換をむしろリカーリング率の明示によってユーザーにアピールしていけばよいのではないかということだ。自らの変革をも積極的に売り物にしていく。ITベンダーにはそんな貪欲ぶりを期待したい。