京王電鉄と日立製作所は11月27日、「AI駅係員サービス」の実現に向けた実証実験を行うと発表した。インバウンド対応や情報共有などの案内サービスの質を向上させ、駅員の案内業務をサポートすることを目的としている。実験は2024年12月2日から2025年3月2日まで、相模原線の橋本駅と京王多摩センター駅の2駅で行われ、AIアバターを搭載したタッチパネルディスプレイが設置される予定だ。
実証実験では、電車の時刻表や乗り換え案内、駅周辺の施設案内、目的地までの移動経路など、利用者が知りたい情報を収集・分析する。また、AIアバターの利用率を検証し、利用者が求める情報をタイムリーに提供することで、快適な駅利用を目指す。
近年、少子高齢化による労働人口の減少やインバウンド需要の増加に伴い、駅係員にはより高度な応対が求められている。京王電鉄は、利用者への案内サービスの充実と、DXを活用した駅係員の業務サポートを重要な課題と捉えている。
この課題を解決するために、京王電鉄と日立製作所は、駅周辺の案内ニーズが高い橋本駅と、テーマパークがあり訪日外国人観光客が多く利用する京王多摩センター駅の2駅で、AI駅係員サービスの実証実験を行うことにした。
日立製作所は、鉄道業界の課題を解決するために、多機能なAI駅係員サービスを開発している。サービスでは生成AIを活用し、複雑な問い合わせに自動で応答する。また、遠隔応答やスマートフォン対応により、利用者が使いやすい方法で案内を提供する。さらに、駅の特性や利用者のニーズに合わせた情報を提供し、多言語機能を活用してインバウンド需要にも対応している。
AI駅係員のアバターが搭載されたタッチパネルディスプレイに利用者が質問すると、AI駅係員が自動で応答する。生成AIに駅係員としての回答内容を学習させることで、正確で高精度な自動応答を実現する。さらに、駅係員が自由に表示情報を作成・設定できるため、駅周辺施設のアクセス情報や定期券購入の開始時期など、利用者のニーズや季節・イベントに応じたFAQ応答の範囲を広げることができる。
AI駅係員サービスの利用の様子とポスター画像(提供:日立製作所)
また、京王電鉄のウェブページと連動して最新の運行情報を表示するほか、列車のダイヤが乱れた際には、駅構内の最新案内に誘導するアナウンスも表示する。駅に設置されたタッチパネルディスプレイだけでなく、AI駅係員のポスターにある近距離無線通信(NFC)タグにスマートフォンをかざすと、スマートフォンのブラウザー上でも同様のサービスを受けることができる。そのため、タッチパネルディスプレイが他の利用者に使われている場合でも、自分のペースで利用することが可能だ。
京王電鉄は、今回の実証実験を基に、案内サービスの拡充や駅係員の業務サポートを実践する。今後も、利用者が快適に駅や電車を利用できるよう、さまざまな角度からAIの活用方法を検討していくとしている。