業務用ラベルプリンターおよび認識装置製造のサトーホールディングスと総合リサイクル事業のナカダイホールディングスは、廃棄物の回収、処理、再生材生産までの一連の工程を可視化するトレーサビリティーシステムを構築したと発表した。実証実験(PoC)に成功しており、商用化を見据えた取り組みを進めるという。
両社は、2023年に循環型経済の実現を目標として、廃棄物の回収から処理、再生材生産までの一連の工程を可視化するための協業を開始。先にナカダイへ廃棄物の処理を委託する企業の廃棄物置き場にカメラを設置し、その画像をAIで分析して集積状況を可視化するPoCに成功していた。今回は、廃棄物の手動での解体や選別、各処理工程をデジタル化してデータの蓄積とトレース(追跡)ができるシステムを構築。2024年8月にナカダイのリサイクル工場で、コンテナー設置から出荷に至るまでの工程を可視化するPoCを行ったという。
サトーHDとナカダイHDが取り組むトレーサビリティーシステムの概要
概念実証の内容
具体的には、「コンテナー設置」「回収」「入荷」「移動」「リサイクル処理作業/処理結果」「出荷」の各工程でデータを取得。回収した廃棄物を保管する容器にIDを付与したラベルを貼り付け、ナカダイのリサイクル工場への入荷・移動・解体・出荷までの各工程にひも付けて記録することで、廃棄物処理から再生材生産の状況をリアルタイムに把握できることを確認した。このPoCで以下の効果などを認めた。
- 廃棄物を管理するコンテナー単位でのID化により、マニフェストや内容物の情報をひも付けた管理を実現
- コンテナー単位で「内容物」「保管場所」「重量」「工程チェック」の管理を実現
- 入荷時のコンテナーと処理作業から生まれたコンテナー(有価物/廃棄物)をひも付けしてのトレース情報の記録
- 複数のコンテナーが1つの作業工程により集約される情報の記録
- コンテナーのIDに対して複数のマニフェスト情報をひも付けることによる細かなマニフェストの処理期限管理の実現
- 日別、工程別の処理量などの可視化を通じて誰が・いつ・どこで・どのくらいの処理をしたかデータで可視化
- 計算値ではなく限りなく実態に近いデータの取得
- 入荷、処理、出荷の実績を重量ベースで管理
- リサイクル工場内のエリア別、入荷日別の廃棄物の在庫の可視化
両社は、再生資源化の工程のデジタル化、可視化を通じて、再生資源の品質グレード要求に必要な情報の取得や管理が可能になり、廃棄物の回収が不安定であっても再生資源の安定した出荷や品質を担保できると説明。データ化により信頼性のある再生材の販売を実現するという。
さらに、この仕組みを活用してリサイクラーのオペレーションのルール化、処理工程の課題を明確にでき、廃棄物処理産業を担う企業の再生資源供給産業への移行促進も支援できるとしている。