エコシステムに波紋を広げるArmとQualcommの争い
Arm分野でAppleの優位が続いているが、筆者はQualcommとArm Holdingsの法廷闘争を注視してきた。この争いの影響により、Armエコシステム全体が大きく形を変える可能性がある。ArmはQualcommのNuvia買収によってアーキテクチャーライセンスが無効になると主張し(Qualcommの主張は逆)、大きな不確実性が生まれている。
Armが先頃、Qualcommのアーキテクチャーライセンスを60日以内に解除すると通告したことで、この訴訟の影響がさらに大きくなった。実際に解除された場合、QualcommはArmの知的財産を使用したチップを出荷できなくなり、Qualcommのプロセッサーロードマップに混乱が生じて、PC、モバイル、自動車分野の無数のOEMに影響が及ぶ可能性がある。Armに有利な判決が下れば、一部のOEMがIntelやAMDのx86プロセッサーに回帰することも考えられる。
それでも、Qualcommの自信は特筆に値する。注目を集めた法廷闘争(Appleとの訴訟を含む)に勝利してきた同社に、動揺はないようだ。しかし、筆者はこの訴訟が不安定化の要因となって、Microsoftやその他の企業によるArmベースのイノベーションを遅らせ、GoogleにArmノートPC市場で地位を固める機会を与える可能性がある、と考えている。
Googleのカスタムシリコンの道のりは長い
Googleのカスタムシリコン開発の取り組みは、見ていて興味深い。「Pixel 10」とともに2025年の登場が予想される「Tensor G5」は、その取り組みにおける重要な一歩だ。TSMCの第2世代3nmプロセスと「InFO-PoP」パッケージを使用して設計されたTensor G5は、熱効率の向上、チップサイズの小型化、電力管理の改善が期待されている。いずれも次世代ArmノートPCの重要な要素だ。
Appleの「A」シリーズチップとMシリーズチップの成功を目にしてきた筆者は、GoogleのアプローチにAppleとの類似点があるように思えてならない。ハードウェアとソフトウェアを緊密に統合することで、GoogleもAppleのようにパフォーマンスと効率の向上を実現できる可能性はある。だが、Googleは何年も遅れており、簡単には追いつけないだろう。QualcommやMicrosoftといった競合が急ピッチでイノベーションを進めている状況では、なおさらだ。
Tensor G5が期待どおりの性能となり、GeminiのAI機能が全面的に統合されれば、Googleはついに、競争の激しい市場で異彩を放つArmノートPCを提供できるかもしれない。その可能性はあるが、重要なのは実際の結果だ。
Googleの正念場
筆者は長年にわたり、Googleのハードウェアの取り組みが大胆な野心と戦略的な失敗の間で揺れ動くのを見てきた。ChromeOSとAndroidの統合はターニングポイントであり、Googleが長年の問題に対処して、パーソナルコンピューティングのビジョンを再定義するチャンスであるように思える。
しかし、成功は保証されていない。Arm分野におけるAppleの優位は揺るぎないものであり、MicrosoftのCopilot搭載ArmノートPCは勢いを増している。Googleは計画を完璧に実行し、自社製品を競合の製品と差別化できるようなイノベーションを起こさなければならない。
今こそ、Googleがビジョンを実現できることを証明する時だ。成功すれば、Android搭載ノートPCの新時代が幕を開けるだろう。成功しなければ、Googleの実現しなかった可能性の歴史に新たな章が加わることになるかもしれない。
今のところ、筆者は用心しつつも楽観視を続けている。だが、Googleの方向転換を長年追ってきた者として、最終的な判断は「Droidbook」が登場するまで保留するとしよう。
提供:xijian/Getty Images
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。