東亜ディーケーケー、自動ピッキングシステム「AutoStore」導入--荷待ちと残業時間削減へ

加納恵 (編集部)

2024-12-26 11:32

 計測機器などの製造、販売を手掛ける東亜ディーケーケーは、製造拠点である埼玉事業所(埼玉県狭山市) に自動倉庫型ピッキングシステム「AutoStore(オートストア)」を導入した。ドライバーの荷待ち時間が減少したほか、スタッフの残業時間を少なくするなど効率化に結びつける。AutoStoreの日本法人であるAutoStore Systemが発表した。

東亜ディーケーケーに導入された自動倉庫型ピッキングシステム「AutoStore(オートストア)」
東亜ディーケーケーに導入された自動倉庫型ピッキングシステム「AutoStore(オートストア)」
東亜ディーケーケーの埼玉事業所(埼玉県狭山市)
東亜ディーケーケーの埼玉事業所(埼玉県狭山市)

 AutoStoreは、ノルウェーのロボティクス企業であるAutoStoreが開発。「BIN(ビン)」と呼ばれるプラスティック製のボックスに部品などを格納。ピッキングロボットがオーダーに応じて部品をピッキングし、スタッフのいる「受け取りポート」まで運ぶ。東亜ディーケーケーでは、6740のBINを備え、8つのピッキングロボットが稼働する。

グレーのボックスが「BIN」。東亜ディーケーケーでは多品種少量の部品などを入れている。BINに入らないサイズの部品については、通常棚に整理されていた
グレーのボックスが「BIN」。東亜ディーケーケーでは多品種少量の部品などを入れている。BINに入らないサイズの部品については、通常棚に整理されていた

 「人件費の上昇と労働人口の切迫がピッキング作業を自動化する大きなモチベーションになると考えている。AutoStoreは、高密度、柔軟性、スピードの3つが強み。『Micro』『Medium』『Mega』と大まかに3つのサイズを用意し、日本においてはMicroを導入している企業が比較的多い。大型から小型まで対応できる幅がある」(AutoStore System マネージング・ダイレクターの安高真之氏)と現状を話した。

 東亜ディーケーケーでは、2024年6月に埼玉事業所の建て替えを完了。事業所内には開発研究センターと狭山インテグレーションセンター、医療関連機器生産棟の3つを構える。

 「以前の建物では、細かい仕切りの中に多種にわたる部品を置き、作業担当者はピッキングするためにかなりの距離を歩く必要があった。これは長年の課題になっており、ここを自動化できないかと考えた。加えて(2024年問題などを受け)トラック輸送などが難しくなる中、製造拠点から製品を出す時間を短縮できないかと考え、ピッキングに良い装置はないかと探し始めた」(東亜ディーケーケー 常務取締役の中島信寿氏)ときっかけを話す。

スタッフのいる「受け取りポート」は4つ用意されていた
スタッフのいる「受け取りポート」は4つ用意されていた

 数年間かけて幾つかのシステムを検討したというが「労働人口が減ったときに、(今と同じ量の)仕事をこなすにはどうすればよいか考えて、最終的に行き着いたのがAutoStore」(東亜ディーケーケー 執行役員 生産本部 生産管理部長の齋藤利男氏)と効率性を重視したという。

 AutoStoreの代理店を務めるオカムラの物流システム営業部 部長である近藤慎一氏は導入までを伴走。天井までの高さを有効活用することで収納効率を高めるAutoStoreだが、東亜ディーケーケーの天井はそれほど高く設計しておらず、いかに必要な収納量を確保できるかが導入への焦点だったという。

 「AutoStoreの設置部分だけ天井を高くすることも考えたが、それでは、ほかのエリアと階高の段差ができてしまい、建屋建築コスト上昇や上階フロアの使い勝手が悪くなるなどの問題があった。そこで、設置部分のみ1m60cmほど床を掘り、BIN収納部を通常の床よりも低くする形での導入になった。これにより、BINを5段ほど多く積み上げられ、必要な収納スペースを確保できた」(近藤氏)と工夫を凝らす。

 床を掘ることで、結露の可能性なども生じるが「空気を循環して結露を防止する空調を取り付けて対策している。日本では限られたスペースをどう有効活用するかが課題になりがち。今回の導入では、それを徹底的にやりきったと感じている」(近藤氏)とした。

 実際、AutoStore導入後の現場では「入出庫作業が早くなり、ドライバーを待たせる時間が減った」「時間外労働が減った」という効果が出ているという。以前は、ドライバーへの引き渡しが18時を過ぎていたというが、現在は16時の時点で引き渡すための作業がほぼ完了しているという。

 「最初は価格の面から導入が難しいと考えたAutoStoreだったが、建物内にシステムをきちんと集約でき、床面積も確保できるという条件で導入を決めた」(齋藤氏)とのこと。加えて中島氏は「費用対効果を考えて導入を決めた。労働環境の改善、ホワイト物流を実現するために私たちができることなどを総合的に検討して採用した」と続ける。

 AutoStoreは日本国内で現在73のシステムが導入されており、製造現場のほか、物流や倉庫などで活用されているとのこと。2025年の第1四半期には冷蔵、冷凍向けのAutoStoreの販売開始も予定している。

(左から)東亜ディーケーケー 常務取締役の中島信寿氏、執行役員 生産本部 生産管理部長の齋藤利男氏、オカムラ 物流システム営業部 部長の近藤慎一氏、AutoStore System マネージング・ダイレクターの安高真之氏
(左から)東亜ディーケーケー 常務取締役の中島信寿氏、執行役員 生産本部 生産管理部長の齋藤利男氏、オカムラ 物流システム営業部 部長の近藤慎一氏、AutoStore System マネージング・ダイレクターの安高真之氏

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