ネットアップと山口大学 情報基盤センターは、災害を想定して被災地から衛星インターネット回線経由で遠隔地のストレージにあるデータに接続する実証実験に成功したと発表した。被災時の事業継続性の確保や復旧のための業務の対応などにおいて、状況適応力と回復力を高められるとしている。
実証実験では、「地域の支社が被災し、ネットワーク接続や電源を失い本社から孤立した」というシナリオを設定。東京都中央区のネットアップのオフィスにあるサーバールームのストレージと、被災地の仮設拠点に見立てた山口県美祢市の国定公園秋吉台との間で、衛星インターネットサービスの「Starlink」を経由したVPN接続を行った。
秋吉台側では、普通自動車1台程度の設備としてポータブル発電機やノートPCなどの機器を用意。ノートPC上の仮想マシンにNetAppストレージを設定、稼働させ、StarlinkによるVPN回線経由で東京側のストレージに接続、データの同期とその際のファイルコピーの実行を検証した。

実証実験のイメージ(報道発表資料より)
その結果、被災地の拠点では普通自動車1台で輸送可能な重量、大きさの機器を利用して、1時間程度で接続のための環境を構築できることが確認された。通信では、接続速度が下りで約200Mbps、上りで約20Mbpsとなり、遅延は毎秒約20~50ミリであった。データの同期に支障はなく、ネットワーク遅延の大きい衛星通信の環境であっても単純なファイルコピーの場合と比較して2倍以上の速さで同期が完了できることも確認したという。

実証実験の様子(報道発表資料より)
成果について山口大学 理事・副学長の松野浩嗣氏は、「災害時のBCP(事業継続計画)を考える上で、電源、平時のネットワークを喪失することを想定し、早期にネットワークを復旧し、データの保全を図れる手段を確保しておくことは重要。今回、可搬性の高い機材で衛星通信を用いた実用的なネットワークの確保と、比較的高速にデータが保全できることが確認できたこと、さらに、それらを被災想定した環境で実現可能なことを確認できたことに、この実験の意義がある」とコメントした。
また、ネットアップ 専務執行役員の平松貢氏は、「災害に対するレジリエンス向上を実現する新たな可能性を確認できた。今回の結果も踏まえながら災害対策における新たな選択肢を提案し、ひいては被災地や国内企業団体・自治体の災害に対するレジリエンス向上の一助になれば幸いだ」と述べている。