ストレージベンダーの米NetAppで最高経営責任者(CEO)を務めるGeorge Kurian氏は1月30日、都内で開催された同社のプライベートイベントに合わせてメディアと対話を行った。データやAIがもたらすインテリジェンスとテクノロジーの意義などについて見解を述べたほか、双子の兄弟でGoogle CloudのCEOを務めるThomas Kurian氏との間柄も話してくれた。

NetApp 最高経営責任者のGeorge Kurian氏
Kurian氏は、現在の経営戦略で「インテリジェントデータインフラストラクチャーカンパニー」を掲げる。対話の冒頭で同氏は、「今われわれは、データとインテリジェンスの時代、第3のデータの時代に生きている」と切り出した。それは、アナログな情報をデジタル化する第1のデータの時代、限定的でも蓄積するデータからビジネスの経緯を把握できるようになった第2のデータの時代を経ての流れだという。
第3のデータの時代は、ビジネスに関係する多様な立場のあらゆるデータの統合から獲得するインテリジェンスで正しく深い理解ができることだとKurian氏。例えば、顧客を深く理解するには、CRMシステムのデータや購買履歴データ、メールやビデオ会議でやりとした文章や映像、音声のデータなどを統合し、使いやすく洗練された分析ツールでインテリジェンスを獲得する。
ただし、こうしたことを実現する上で現状は、目的やデータ、システムごとに異なるツールやテクノロジーを使い分けないといけない。そこでKurian氏は、データ活用とインテリジェンスの成功を図るインテリジェントなデータインフラストラクチャーが必要であり、同社がそれを担っていると強調した。
「データ、アプリケーション、オンプレミスやあらゆるクラウドに跨がるものであるかに関わらず全てのデータを共通のデータストレージプラットフォームに統合する能力が必要であり、さらには、セキュリティやプライバシー、ガバナンスとともに、そのデータ基盤と統合されたサービスも必要だ。そして、それらを有用で使いやすいものにすることが重要になる」(Kurian氏)
Kurian氏は現在までの取り組みとして、(1)AIアプリケーションやGPUのための超高性能なインフラの構築、(2)データやAIモデルの関連付けや管理、変更などを行うインテリジェントなエンジンのインフラへの実装、(3)高度なデータ保護やコンプライアンスやプライバシーの担保、メタデータ利用、マスキングなどデータのため高度な機能の提供――を挙げた。
またKurian氏は、クラウドのハイパースケーラー各社やNVIDIAなどのパートナーによる強力なエコシステムを構築し、エコシステムを通じて、顧客組織が統合されたデータからビジネスの価値や優位性を得るインテリジェンスを活用するためのプラットフォームを同社が提供していくと説明した。
メディアとの質疑応答でKurian氏は、データインフラを支えるストレージベンダーとして、高いシェアを獲得しているというオールフラッシュモデルの提供、高密度実装や優れたエネルギー効率などを特徴とするハードウェア、ハイパースケーラー各社との協業に基づくインフラからアプリケーションまでの密な連携やコストの最適化などが強みだと述べた。
日本については、「われわれにとってアジア地域で最大かつ、ビジネスの成長において最も重要な市場になる。特定の業界や大手顧客で非常に強みを発揮しているが、新たな分野にビジネスを拡大する必要もある」とコメント。新規領域として中堅・中小企業や公共などを挙げたが、日本法人代表執行役員社長の中島シハブ・ドゥグラ氏は、多様な業界で顧客を拡大しつつ、例えば、製造業では半導体分野など業界ごとの深耕も図っていくと補足した。

ネットアップ 代表執行役員社長の中島シハブ・ドゥグラ氏
さらにKurian氏は、直近で中国のDeepSeekが世界のAI市場に影響を与えている状況について、「AI市場はまだ発展の途上にあり、特に生成AIの分野はこれからだ。多くの競合が生まれることは、この分野の発展につながり、AIモデルの発展やエネルギー効率の向上といった多くの恩恵につながる」とした。
Google Cloud CEOのThomas Kurian氏との間柄では、「幸運にも同じ業界で働く兄弟がいる。私たちはテクノロジーをどのように活用すれば人間の状況を改善できるのかに集中している。シリコンバレーの中心にいると、テクノロジーに夢中になってしまうのは簡単だ。テクノロジーの力が世界中の人々を助ける。(出身の)インドで育った私たちはコンピューターを見たことがなかった。テクノロジーの進化に貢献することは、私たちにとって本当に重要なことだ」と語った。