この10年間で、RedisやElastic、MongoDB、HashiCorpといった企業がオープンソースライセンスのルーツを捨てて、プロプライエタリーモデルに移行した。各社はクラウドプロバイダーとの競争や投資家からの圧力を理由に挙げているが、その決定は利益の追求を目的としたものに他ならない。だが、これには1つ問題がある。それは、この戦略がうまくいかないということだ。
英国の「State of Open」カンファレンスで、「CHAOSS」プロジェクトのデータサイエンスディレクターを務めるDawn Foster氏は、フォーク(プロプライエタリーコードベースに代わるコミュニティー主導の代替ソフトウェア)が成功していることを示す有力な証拠を発表した。その一方で、オープンソースの原則を放棄した企業は、成長が停滞し、ユーザーを幻滅させている。
プロプライエタリー化の背後にあるビジネス理論は、好ましいものに聞こえる。出自であるオープンソースライセンス(「Apache 2.0」や「AGPL」など)を捨てて、「Server Side Public License」(SSPL)や「Business Source License」(BSL)などの制限付きライセンスに切り替える方が、コードの収益化は簡単だ。
しかし、残念なことに、多くの企業は金銭的な利益を実現できていない。開発者調査会社RedMonkが発表した、シニアアナリストのRachel Stevens氏による調査結果では、「ライセンスの変更と企業価値の向上に明確な関連性はない」とされている。プロプライエタリー化の後に売り上げは増加したが、成長率の推移は変更前と同じだった。
State of Openで、RedMonkの共同創設者であるJames Governor氏は次のように述べた。「上場企業の株価が上がるわけでも、収益が増加するわけでもない。『ライセンスを変更したら急成長した』という明確な事実はない。こうした決定を下す企業は、ライセンス変更が自社を次のレベルに引き上げる特別な原動力になると期待しているのだろう。しかし、実際はそうでないことを数字が示している」
一方、Foster氏は同カンファレンスにおいて、企業がコードをクローズすると、コミュニティーが反発して、よくできたフォークをリリースする、と指摘した。例えば、Elasticが2021年にライセンスを変更した後に「Elasticsearch」からフォークされた「OpenSearch」は現在、Amazon Web Services(AWS)やLogz.io、Aivenからコントリビューションを受けており、400以上のコントリビューターがいる。
Redisのフォークである「Valkey」は、Redisのライセンス変更からわずか8日後にThe Linux Foundationによって発表された。ValkeyはThe Linux Foundationの主要メンバーであるAWS、Google、阿里巴巴(アリババ)の支援を受けている。一方、HashiCorpの「Terraform」からフォークされた「OpenTofu」は、The Linux Foundationのプロジェクトとなり、数カ月で120以上のコントリビューターを集めた。