Oracle CloudWorld

日本のソブリンを実現するクラウドやAIを本格展開--オラクルとパートナーらが最新動向

國谷武史 (編集部)

2025-02-14 06:00

 日本オラクルは2月13日、都内で年次イベント「Oracle CloudWorld Tour Tokyo 2025」を開催した。基調講演では、同社の首脳陣やパートナーらが日本の顧客に対応したソブリン(主権)のクラウドやAIの本格的な展開を表明し、最新の動向を紹介した。

 同イベントは、米国で9月に開催されたグローバル年次イベント「Oracle CloudWorld」の世界ツアーの一環となる。会場には多数の顧客やパートナーら関係者が参集し、会場は来場者であふれかえる盛況ぶりとなった。

日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏
日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏

 前回開催の「Oracle CloudWorld Tour Tokyo 2024」では、Oracleとして日本で今後10年間に80億ドル(約1兆2000億円)以上を投資すると表明し、注目を集めた。今回の基調講演に登壇した取締役 執行役 社長の三澤智光氏は、冒頭のあいさつで「われわれは、日本のためのクラウド、お客さまのためのAIに注力している。(表明した)1兆2000億円の投資を現在も継続しており、『ジャパンオペレーションセンター(仮称)』の開設準備を進めている」と報告した。

(訂正とお詫び:初出時に「先行して1000億円を既に投資」との記載がありましたが、正しくは「1兆2000億円の投資を現在も継続」でした。取材時点の確認が不十分となり記載内容に誤りがございましたことを深くお詫びいたします。)

 ジャパンオペレーションセンターは、同社のクラウド基盤「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)の運用、サポート、メンテナンスを24時間体制で行う新組織で、これら作業を海外ではなく日本で実施することや、パートナー向けの1次対応などをOracleの人員が担当する点が特徴になるという。専務執行役員 クラウド事業統括の竹爪慎治氏によれば、現在は国内パートナーとの調整作業や人材採用を行っており、開設に向けて準備が順調に進んでいるとした。

 三澤氏は、「ハイパースケーラー」と称される大規模クラウドサービス提供事業者の中で、Oracleが最後発であるが故に、先端テクノロジーを駆使して業界最高レベルのパフォーマンスやコストメリット、セキュリティに優れたOCIを提供している点が同社の特徴だと強調する。

 また、クラウドビジネスで競合したAmazon Web Services(AWS)や「Microsoft Azure」、Google Cloudとも協業を深めるマルチクラウド戦略を展開するほか、OCIの設備をパートナーが自国のデータセンターに導入して顧客にクラウドサービスを提供できる「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer」や「Oracle Alloy」など、市場特性に応じた柔軟かつ多様な提供モデルも特徴だとした。さらには、ERPをはじめとする業務アプリケーションをフルSaaSとして競合よりいち早く顧客に提供している点もユニークだと語った。

 三澤氏が近年強調するキーワードの1つが、「sovereign(ソブリン=主権者)」になる。ITでは、クラウドなどに展開するデータやクラウド環境の運用管理といったものの主権をユーザー側が確保するという概念だが、国・地域、業界、企業・組織それぞれにおいて規制やコンプライアンス、ポリシー、セキュリティなどの要件が厳格化し、昨今では、経済安全保障やAI/生成AIの台頭も相まって、ソブリンの実現が重要なテーマとなっている。

米Oracle グローバル最高情報責任者 兼 エグゼクティブバイスプレジデントのJae Evans氏
米Oracle グローバル最高情報責任者 兼 エグゼクティブバイスプレジデントのJae Evans氏

 米Oracle グローバル最高情報責任者(CIO) 兼 エグゼクティブバイスプレジデントのJae Evans氏は、同社のAIの取り組みついて、インフラからデータ、モデル、サービス、業種・業界特化を含むアプリケーションまでの全てのスタックをカバーしてOCIから提供している点が強みだとした。特にインフラ領域では、ベアメタル、高性能なRDMAのネットワーク、12万8000以上のGPUによるスーパークラスターおよびその拡張や運用管理性、高性能ストレージ、柔軟性とスピードにより、ユーザーの競争優位性の獲得に貢献するAIの開発を支援していると強調した。

 クラウドやAIを含め中核を担うOCIは、金融や製造、公共、エンターテインメントなど多様な業界のユーザーのビジネス成果に貢献しているとする。上述のパブリック/プライベート/マルチクラウドや、小規模から超大規模環境までの対応力、Dedicated Regionなどユニークで多様なクラウドの構築・提供モデルこそが同社の特色があるとも述べる。

 現在、OCIの提供拠点は計画を含めてグローバルで174リージョンにまで拡大し、日本は7リージョンが稼働中で、さらに7つのリージョンの開設を計画中。また、Microsoftとの協業で提供中の「Oracle Database@Azure」が新たに、同日からMicrosoft Azureの東日本リージョンでも利用できるようになったことを発表した。

「Oracle Database」のマルチクラウド対応の展開
「Oracle Database」のマルチクラウド対応の展開

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