三菱電機は2月25日、「操作ログドリブン開発技術」を発表した。システムの操作ログからオペレーターの経験や知見に基づくノウハウを可視化および共有化し、システムの運転管理や維持管理を高度化するDXシステムの開発に活用できるとする。同社によれば、世界で初めての技術だという。
具体的には、同技術を用いることにより、ヒアリングだけでは把握し切れない操作の実態を収集、解析できる。暗黙知を可視化することで、関係者間でのノウハウ共有を促進し、技術継承を効率化するとともに、DXシステムの要求分析をより的確かつ短期間で実現できるようになる。また、要求分析を基にDXシステムのプロトタイプを早期に構築できるという。さらに、同技術により取得した操作ログから改良を繰り返すことで、効率的にブラッシュアップするアジャイル開発の促進にも貢献。DXシステムの開発期間の大幅な短縮につながるという。

操作ログを活用したDXシステムの開発イメージ(出典:三菱電機)
三菱電機は、将来的に製造や医療、物流、建設などの他業界に応用して、同社のデジタル基盤「Serendie」(セレンディ)と連携し、各種オペレーションを高度化するソリューション創出につなげる考えも示した。
新技術を発表した先端技術総合研究所 副所長の橋本博幸氏は、「従来のDXシステム開発では、主にオペレーターへのヒアリングに基づいて要求分析を行ってきたが、オペレーターのシステム操作時の気付きやノウハウは、時間を経過すると忘れ去られてしまいがちであり、操作の実態やオペレーターのノウハウを反映し切れない点や、開発に時間がかかるという課題があった。オペレーターのシステム操作の実態を操作ログとしてデータを収集、蓄積し、解析することで、オペレーターが忘れていたノウハウを思い出させ、暗黙知に基づいたDXシステム開発を行うことができる。オペレーターと開発者がお互いに操作実態に基づいて情報共有をしながら共創できるため、思い込みによる認識の食い違いを防ぐごとができる」と述べる。

三菱電機 先端技術総合研究所 副所長の橋本博幸氏
例えば、水道や電力などの公共インフラシステムの運転管理や維持管理においては、数千にもおよぶ各種センサーから得られる大量の信号を監視、制御することで、日々の運転を維持している。その一方で、機器の故障や異常気象などによる影響が発生した際には、早期に要因を特定し、対応策を講じる必要があるが、要因の特定はベテランのオペレーターや専門家の判断に依存する場合が多いのが現状だという。
先端技術総合研究所 ソリューション技術部長の山口喜久氏は、「インフラシステムの運転や管理は、異常気象への対応など予測不可能な事態を想定する必要があり、自動化をできないという課題がある。また、大規模設備では、大量のセンサーデータをグラフ化したり分析したりするための操作手順や運転ノウハウが複雑であり、簡単にマニュアル化できないといった課題もある。さらに、労働力不足から技術継承やDXシステムの実現が急務であるものの、そうした課題への対応が難しい。今回開発した技術はこれらの課題解決にもつながる」と説明する。

三菱電機 先端技術総合研究所ソリューション技術部長の山口喜久氏