ガートナージャパンは、オンプレミスに関する最新の展望を発表し、2026年末までに日本企業の半数が従来型仮想化基盤の近代化に失敗すると予想した。
メインフレームベンダーのサポート終了やBroadcomによるVMware買収に伴う仮想基盤製品のライセンス変更などを背景に、同社には企業からサーバー仮想化基盤の維持や移行、代替製品に関する問い合わせが多数寄せられているという。
多くは、これまでサーバー仮想化の選択肢を検討することがほとんどなかったとし、そうした企業では、コンテナーやKubernetes、ハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)、クラウドサービスでコンピューティング抽象化技術などとそのトレンドについての理解に遅れが見られ、合理的な判断に時間が要していると指摘している。
オンプレミスの仮想化基盤の移行先でクラウドサービスを選択しても、単なる「リフト」(オンプレミスのサーバーの機能をほぼそのままクラウドへ移行すること)だけで、上述の仮想化基盤の近代化を図るテクノロジーを活用した「最適化」「シフト」には至らず、コストの増大や、スキルおよびケイパビリティー不足に起因する重大インシデントの発生に見舞われる恐れもあると注意する。
同社は、日本のIT部門の70%が2028年末までにオンプレミスインフラの老朽化対応について予算を超過し、経営層から厳しく追及されることになるだろうとも予想。「いつも通り、従来通りだから安心・安全」「これまでは特に問題が起きていない」「ITシステムの標準化によって複雑さを避ける」「現在手に負える範囲にとどめる」などの前例にならった説明や、旧来の常識的な対応では、既に近代化に向けたITインフラ投資を正当化できないとも指摘する。
他方で、AIや生成AIの実装がインフラ層にまで及んでおり、経営層はインフラの維持や保守に数十億円の固定費を投じるより、新たなビジネスを支えるAIや生成AIなどの新興テクノロジーへの投資を増やしたいと考えているとする。同社の調査では、日本企業の最高情報責任者(CIO)の半数が2025年にデータセンター関連技術への投資を減らす意向であることも判明しているという。
同社 ディレクター アナリストの青山浩子氏は、「老朽化対策をIT部門だけで進めるのではなく新興テクノロジーへの投資も含めて、経営層やビジネス部門と対話しながら行うことが重要。断捨離を行い、IT投資とコスト最適化のプロセスをサービス運営の視点に立って標準化することが求められる」と述べ、オンプレミスにまつわる従来の常識や既成概念から脱却し、オンプレミスかクラウドかに関係なくAI/生成AIを活用したプラットフォーム戦略へと転換が求められ、ITインフラの近代化にどう取り組んでいくかが今後の企業の存続に関わると警鐘を鳴らしている。