Snowflakeは2月27日、ぐるなびにおけるクラウドデータプラットフォーム「Snowflake」の活用事例について説明会を開催した。
ぐるなびの飲食店情報サイト「楽天ぐるなび」は1996年に創業し、2024年12月時点で会員数は約2745万人、総掲載店舗数は約42万店に上る。同社は「ぐるなびネットワーク」として、消費者と飲食店をつなぐ楽天ぐるなびを中核事業に、生産者・卸業者、食関連メーカー、商業施設、自治体など、外食産業の事業者にさまざまなサービスを提供している。

ぐるなび CTOの岩本俊明氏
ぐるなびの最高技術責任者(CTO)を務める岩本俊明氏は「当社は幅広いデータを持っているので、『データの民主化』につなげようとした」と説明。同社は、データの民主化を「全ての部署の社員がデータを活用できている状態」と定義し、ビジネスチャンスの創出を図る。
ぐるなびではもともと、「データのサイロ化」が大きな課題となっていた。各部署でそれぞれのデータを管理しているほか、データの管理場所もオンプレミス・SaaS・パブリッククラウドと分散していた。
そこで同社は、Amazon Web Services(AWS)のストレージサービス「Amazon S3」で構築されたデータウェアハウスを起点に、データをSnowflakeに集約することに取り組んでいる。S3とSnowflakeを連携させるほか、一部のデータはSnowflakeと直接連携させている。加えて、各部署でビジネスインテリジェンス(BI)ツールを導入・スクラッチ開発していたが、特定のBIツールへの一本化を進めている(図1)。

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組織の縦割り構造により、ぐるなびでは他部署のデータを利用する承認を得るまでに時間がかかったり、他部署のデータが使いものになるのかが不明確で活用の機会を逃したりしていた。加えて、データ組織とユーザーインターフェース(UI)開発組織が分かれていたことから、すり合わせに時間がかかり、サービスの提供開始が遅れることもあった。
ぐるなびは、データ活用に関する課題には「データへのアクセス管理に関するルールの全社的な見直し」、組織に関する課題には「コラボレーションしやすい組織やチームの構成」を行うことで対応。具体的には、プロダクトマネージャー、ウェブディレクター、UIデザイナーなど、各役割の人材を同じチームに集約。Snowflakeのオープンソースのウェブアプリケーションフレームワーク「Streamlit」内のデータを共有しながら、小さな検証を重ねることで、コミュニケーション上の無駄を削減している。
この体制のもとぐるなびは、生成AIや同社のデータを活用してユーザーの外食ニーズに適した店舗を提案するアプリ「UMAME!(うまみー!)」のベータ版を2025年1月に提供開始。同アプリでは、チャット検索や画像ファイルでの検索が可能。開発期間は約6カ月に短縮され、現在は週1回バージョンアップを行っている。
ぐるなびにおけるデータの民主化の意義について、岩本氏は「当社は、飲食店や消費者が入力する情報だけでなく、あらゆるデータを持っている。こうしたデータを横断して活用できるようにすることで、新しいビジネスを生み出すことが最重要である。UMAME!をより人間らしいAIへと進化させるとともに、得られた洞察を基にぐるなびの全プロダクトを進化させたい」と語った。
説明会では、楽天ぐるなびにおける飲食店のデータを自然言語で分析するデモンストレーションも実施。同社は「Snowflake Cortex AI」を活用してStreamlit上にアプリケーションを構築。アプリケーションから「Cortex Analyst」に質問文をリクエストし、SQLを取得。データベースに対してSQLの実行とデータの取得を行い、取得されたデータに対して「Cortex LLM」が考察する仕組みだ(図2)。

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デモンストレーションでは、ぐるなび 技術戦略室 データサイエンスグループ グループ長の新井駿氏が「枝豆の価格を350円で提供しており、値上げができないかを検討している。新宿エリアの最新の枝豆価格を知りたい」と質問文を入力すると「2025年2月1日時点での同エリアの平均価格は410円」というデータが表形式で表示された。このデータを基に、Cortex LLMは「段階的な値上げとして、まずは380円程度への引き上げを検討できる」などと提案した。