「オープンプラットフォームで変革実現」--レッドハット、製造業での取り組み解説

渡邉利和

2025-03-06 11:34

 レッドハットは「オープンソースイノベーションによる製造業の変革」をテーマに、同社の産業分野への取り組みに関して説明を行った。

 全体像に関して米Red Hat インテリジェントエッジグローバルビジネス開発担当シニアディレクターのKelly Switt(ケリー・スウィット)氏が説明した。同氏は、3月3日付で発表されたニュースリリース「Red Hatとソフトバンク、AI-RANのネットワークパフォーマンスとエネルギー効率を最適化」について言及し、「これと同様のことを産業界のオートメーションの分野でもやりたい」と語った。

米Red Hat インテリジェントエッジグローバルビジネス開発担当シニアディレクターのKelly Switt氏
米Red Hat インテリジェントエッジグローバルビジネス開発担当シニアディレクターのKelly Switt氏

 AI-RANは、「AIアプリケーションと無線アクセスネットワーク(Radio Access Network)を同一のコンピューター基盤上に統合する革新的なアーキテクチャー」だと説明されており、「AI-for-RAN」(AI技術によるRANの性能向上)、「AI-and-RAN」(AIとRANが同一の基盤を共有)、「AI-on-RAN」(AIアプリケーションをRANの近くで実現)の3つのコンセプトを含む。

 前述のニュースリリースはAI-on-RANの分野に含まれるもので、「Red Hat OpenShift」や「Kepler」を活用してオーケストレーターに消費電力の最適化機能を追加したという内容だ。これはテレコミュニケーション分野での事例であり、5G/6Gの基地局での話なのでエッジとは言っても比較的リソースが潤沢な用途だが、AIの活用自体は製造業における工場のような現場環境でも今後広がると予想されており、同社としてもそうした動向に対応した取り組みを進めているところだ。

 Switt氏は産業分野における課題として「急速な変化のスピードに追い付くためにさまざまな選択肢から適切な選択を行う必要があるが、テクノロジーが複雑化しており、さらに既存の古いインフラや多数のアプリケーションのモダナイズを行う必要もある。製品の市場投入までの時間は短縮しなくてはならず、イノベーションのためにも効率を向上させ、さらにサイバーセキュリティのリスクを低減しなければならない」と指摘した。

 その上で、こうした課題を抱える産業分野の顧客に対して「イノベーションの力をお客さまに対して解放したい。そのためRed Hatはパートナーやお客さまとコラボレーションし、オープンプラットフォームでイノベーションを実現する。われわれは『カタリスト(触媒)』『イネーブラー(実現者)』となって『自律構成』『自律最適化』『自己修復』ができるような工場の実現を目指す」と語った。

 基盤となるのは当然ながら「Linux」ベースのOSで、同氏は「オープンスタンダードのプラットフォームで、ハードウェアとソフトウェアのレイヤーを分離する低遅延の産業用OS」を提供するとしている。さらに、現在同社が注力している取り組みがオープンソースプロジェクトとして活動中の「Margo」だ。Margoは産業分野でのオートメーションを実現するための相互運用性を実現することを目指して標準仕様を策定しており、Red Hatもステアリングメンバーの一員としてプロジェクトの運営に携わっている。

 次に、レッドハット グローバルセールス Industry4.0事業開発室 室長の松本洋一氏がSwitt氏の説明を受けて、国内での状況について説明した。「OTとITの融合を進め、製造DXを実現するためにどうすべきか」という観点から、同氏は日本特有の課題としてシステムインテグレーション(SI)事情に起因する「二重苦」を挙げた。

 日本ではユーザー企業内にIT人材があまり豊富ではなく、SI事業者に依存している状況があり、ユーザー企業内にITのノウハウの蓄積が乏しい。加えて、SI事業者の中でもITに強い事業者とOTに強い事業者が分かれており、両者ではノウハウの共有などは行われていないことから、ユーザー企業内でのIT/OTの連携に加えてSI事業者のレイヤーでもIT/OTの融合の連携を実現する必要があるという。

これからの日本におけるITとOTの融合の進め方
これからの日本におけるITとOTの融合の進め方
※クリックすると拡大画像が見られます

 そうした課題がある中、前述のMargoはITとOTを連携させる際に必要となる共通技術規範/プロトコルを定義していることから、これを活用することでスピードアップが図れると松本氏は指摘し、「日本も『良い物があるのだから使いましょう』という機運になれば、キャッチアップできるのではないか」という。

 一方で同氏は、Margoプロジェクトのステアリングコミッティーに日本企業が参加していない点を指摘しつつ、「換骨奪胎」という言葉を使って「もともとのアイデアの本質(骨組み)を生かししつつ、新しい要素を加えてさらに高みを目指す」という方向性を示した。

Kelly Switt氏(左)、レッドハット グローバルセールス Industry4.0事業開発室 室長の松本洋一氏
Kelly Switt氏(左)、レッドハット グローバルセールス Industry4.0事業開発室 室長の松本洋一氏

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