松岡功の「今週の明言」

コンカー前社長創業のスタートアップは「従業員エンゲージメント」で存在感を発揮できるか

松岡功

2025-03-07 10:35

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、U-ZERO 代表取締役 CEO 兼 CPOの三村真宗氏と、フォーティネットジャパン 脅威インテリジェンス研究員 兼 FortiGuard Labs 日本向けスポークスパーソンの今野俊一氏の「明言」を紹介する。

「日本の従業員エンゲージメント分野でのスタンダードを目指したい」
(U-ZERO 代表取締役 CEO 兼 CPOの三村真宗氏)

U-ZERO 代表取締役 CEO 兼 CPOの三村真宗氏
U-ZERO 代表取締役 CEO 兼 CPOの三村真宗氏

 従業員エンゲージメントのクラウドサービスを提供するスタートアップ企業U-ZEROの代表取締役 最高経営責任者(CEO)兼 最高製品責任者(CPO)を務める三村氏は、同社が先頃都内ホテルで開いた事業の本格展開に向けた記者会見の質疑応答で、事業への意気込みを聞いた筆者の質問に対して上記のように答えた。

 スタートアップとはいえ、経費計算のクラウドサービスを提供するコンカーの社長を12年間務め、従業員エンゲージメントに尽力してきた同氏が創業した企業として注目される。「この分野のスタンダードになれるか」と煽り気味に聞いたところ、意欲に溢れた答えが返ってきたので、明言として取り上げた。

 会見での発表内容については同社発信の資料をご覧いただくとして、ここでは同社のサービスのポイントと三村氏の発言に注目したい。

 U-ZEROが提供するサービスは「組織エンゲージメント改革を実現するトータルソリューション」として、図1に示すように「デジタル」「コンサルティング」「エンパワーメント」の3つのソリューションからなり、それぞれの領域でパートナー企業と共に事業展開していく構えだ。

(図1)U-ZEROが提供するサービスの全体像(出典:U-ZEROの会見資料)
(図1)U-ZEROが提供するサービスの全体像(出典:U-ZEROの会見資料)

 三村氏はこうした事業を始めた理由について、「従業員エンゲージメントは経営のテーマとして注目されている分野だが、多くの企業が有効活用できていないと感じている。そこで、コンカーの実務で培ったノウハウをもとにAIを活用したクラウドサービスを中心としたソリューションを開発し、従業員エンゲージメントに取り組む企業のお役に立てればと考えた」と語った。

 U-ZEROのソリューションのユニークな点は、経営、文化、人事の3つの視点で従業員エンゲージメントに取り組むことだ。その促進要素と同社の取り組みの内容を記したのが、図2である。

(図2)従業員エンゲージメントの促進要素とU-ZEROの取り組み(出典:U-ZEROの会見資料)
(図2)従業員エンゲージメントの促進要素とU-ZEROの取り組み(出典:U-ZEROの会見資料)

 また、図3はこの分野の他の製品・サービスとの違いを示したものである。

(図3)他の製品・サービスとの違い(出典:U-ZEROの会見資料)
(図3)他の製品・サービスとの違い(出典:U-ZEROの会見資料)

 三村氏によると、従業員エンゲージメントを含むヒューマンリソース(HR)テック分野は、左側にあるように「給与・労務」「タレントマネジメント」との3層からなるが、その中でU-ZEROのサービスは「エンゲージメントに特化」「他のHR製品・サービスと連携可能なオープン性」「コンサルティングや人的サービス、パートナー企業の連携による多様なニーズへの対応」といった3つの特徴があると説明した。

 ただ、従業員エンゲージメントの課題として挙げられるのは、例えば調査の設問や手法がサービスごとに異なるため、企業間での優劣を比較できないことだ。それを可能にするには、内容の標準化とともにデファクトスタンダードのサービスの出現が待たれるところだ。果たしてU-ZEROのサービスはスタンダードになれるか。会見の質疑応答でそう単刀直入に聞いたところ、三村氏は次のように答えた。

 「当社では時価総額トップ100企業への浸透率を、2029年までに50%、その後80%まで引き上げていこうという中長期の目標を立てた。そのムーブメントをつくれると規模に関係なく多くの企業へも広がっていくはずだ。そうして、日本の従業員エンゲージメント分野でのスタンダードを目指したい」

 とはいえ、この分野は注目度が高いだけにますます激戦市場になっていくだろう。ビッグテックと呼ばれる外資系ベンダーも本格的に乗り出してくるのは必至だ。そうした中で、U-ZEROが存在感を発揮できるか。三村氏の“カムバックチャレンジ”に注目したい。

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