AIブームでサーバー市場は盛り上がっている? デルが最新事情など説明

國谷武史 (編集部)

2025-03-07 15:56

 デル・テクノロジーズは3月7日、「AI時代の最新サーバーの動向と未来を創るコンピューティング技術の進化について」と題する報道機関向けの説明会を開催した。AIブームでサーバー分野が盛り上がりを見せている中、市場や製品の動向、取り組みなどを同社のサーバービジネス担当者らを説明した。

 説明会では、まず執行役員 インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 製品本部長の上原宏氏が、“2025年”に合わせて直近25年間のサーバーやコンピューティング技術の動向を振り返った。

デル・テクノロジーズ 執行役員 インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 製品本部長の上原宏氏
デル・テクノロジーズ 執行役員 インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 製品本部長の上原宏氏

 2000年代初頭は、2000年に西暦が大きく変わることによる旧来のコンピューターの時計プログラムの大規模障害が世界的に懸念された「Y2K」問題があり、仮想化技術も勃興。2006年のAmazon Web Services(AWS)のIaaSの開始でクラウド時代が幕開けし、2010年前後にはNVIDIA製GPUを活用したハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)環境が学術機関や研究機関、大手製造企業などに導入され出した。2022年には、米OpenAIが生成AIサービス「ChatGPT」の一般提供を開始し、2025年3月7日時点での世界的なAI/生成AIブームとなっている状況だ。

 上原氏は、この間にIntelのCPU性能や社会に提供されるサーバーの演算能力が飛躍的に向上したと述べる。2000年を基準とする同社独自の方法による試算では、IntelのCPU性能が約400倍、演算能力が278倍にそれぞれ向上したとのことだ。

 AIブームで注目されるのがGPUになる。上原氏は、IDCの調査結果を引用して、GPU搭載/非搭載のx86サーバー市場の出荷台数と出荷金額を示した。それによれば、2023年第4四半期頃からGPUを搭載するx86サーバーの構成比が出荷台数、出荷金額とも増え始めたが、2024年第3四半期までの状況では出荷金額の伸びが出荷台数を大きく上回っている。

(デル・テクノロジーズの説明会資料より)
(デル・テクノロジーズの説明会資料より)

 これについて上原氏は、サーバー市場がAIブームで盛り上がりを見せつつあるものの、それはあくまでメーカーの出荷金額ベースの話であり、出荷台数の観点では実態が異なるとし、立場によりブームの捉え方が変わってくると述べる。つまり、メーカーの立場では確かにAIブームでサーバービジネスが盛り上がっているが、サーバーを導入したり利用したりする立場では、製品供給の遅れといった事情もあり、本格的なAI向けの演算リソースの提供や利用はこれからというのが実情であるようだ。

 他方で、AIのワークロードには高い演算能力が求められ、消費電力の増大し、電力供給や廃熱などに伴う地球環境への悪影響も懸念される。現在の一般的なCPUの消費電力は350~400Wほどだが、近い将来に500Wを超え、GPUでは1200~1300W以上になると予想されている。

(デル・テクノロジーズの説明会資料より)
(デル・テクノロジーズの説明会資料より)

 インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 製品本部システム周辺機器部 シニアプロダクトマネージャーの水口浩之氏は、CPUリソースへの要求が増すほど、CPUを安定稼働させるために稼働温度を下げる必要があると指摘した。このためサーバーの冷却は今後、従来の冷気ではなく液体を採用する水冷方式が拡大すると話す。

(デル・テクノロジーズの説明会資料より)
(デル・テクノロジーズの説明会資料より)

 デルは、2017年に水冷方式のサーバー製品の提案を本格的に開始したといい、2021年頃まではHPC環境向けで案件数が徐々に増えが、2022年からのAIブームで急激に増加。2024年は2022年の3倍の規模になったとする。

(デル・テクノロジーズの説明会資料より)
(デル・テクノロジーズの説明会資料より)

 このためデルは、これまでに水冷サーバーの製品ポートフォリオも大幅に拡充。アジアパシフィック&ジャパンフィールドマーケティング本部 シニアコンサルタントの渡辺浩二氏は、サーバーに加えてラック製品においても水冷方式への対応を進めているとした。

 上原氏や水口氏は、「2025年が水冷元年になる」とコメント。水冷サーバーの導入展開には、水冷方式に詳しい専門人材、水関連や電源などのファシリティー、空冷より重い設備を支える床耐荷重の大きなデータセンターが必要だとし、これらを担うシステムインテグレーターや設備事業者、建設事業者、データ事業者らとの新しいエコシステムを構築しているという。

(デル・テクノロジーズの説明会資料より)
(デル・テクノロジーズの説明会資料より)

 水冷元年の意味について上原氏は、「従来の水冷サーバーへの需要はメーカーや学術機関の研究開発におけるHPCなど限定的だったが、それが一般企業にも広がり始めていく方向性になる」と補足。AIブームの様相が前述の金額ベースだけではなく出荷ベースでも実態となれば、本当の意味で水冷サーバーの時代が到来するとの見方であるようだ。

 説明会では、このほかに多様な仮想化のハイパーバイザーへの対応、最適なコストで柔軟かつ多様な構成のサーバーを調達できるサービス、AIや生成AIを用いたサーバー運用管理機能、コンサルティングファームとの協業体制の拡大、宮崎県のカスタマーセンターにおけるAIや仮想現実(VR)を活用したサポートへの取り組みを各担当者が紹介した。

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