ガートナージャパンは3月10日、「2025年のデータ/アナリティクス(D&A)」のトップトレンドを発表した。組織的および人的課題を含む幅広いチャレンジを生み出すとしている。
トップトレンドは、(1)データプロダクト、(2)メタデータ管理ソリューション、(3)マルチモーダルデータファブリック、(4)シンセティック[合成]データ、(5)エージェンティックアナリティクス、(6)AIエージェント、(7)小規模言語モデル、(8)コンポジットAI、(9)意思決定インテリジェンスプラットフォーム――の9種類となっている。
まず、データプロダクトがユーザーに受け入れられるためには、ビジネスにとって重要なユースケースに焦点を当てることが重要だという。その上でデータ提供の課題を軽減するためにプロダクトを相関させ、スケールさせる。再利用可能でコンポーザブルな最小限の機能で実用に足るデータ・プロダクトの提供を優先し、開発チームとユーザーの間で主要パフォーマンス指標(KPI)について合意することが重要だという。
(2)について効果的なメタデータ管理は、テクニカルメタデータに始まり、ビジネスメタデータを含むように拡張されるという。さまざまな種類のメタデータを組み込むことで、組織はデータカタログ、データリネージ(来歴)を含む、AIドリブンなユースケースを実現できる。そのためには、メタデータの探索や管理の自動化と分析を促進するツールを選択することが重要だという。
(3)では、堅固なメタデータ管理の実践には、データパイプライン全体でメタデータをキャプチャーし、分析することが必要だという。また、データファブリックは、企業データの統合、管理を自動化させ洞察の取得を可能にするが、同時にデータのオーケストレーションに対するユーザー要求を満たし、DataOpsによって運用を改善させる必要があるとしている。
(4)は、AIイニシアティブを進展させるためには、データが欠落している、または取得が困難な領域を特定する必要があるという。シンセティックデータは、機密データの代替となり、データのプライバシーを確保するだけでなく、データのバリエーションを増やすことによってAIイニシアティブを促進するという。
(5)のAIエージェントを用いたデータ分析は、組織に革新的なビジネス成果をもたらし、これにより自然言語でデータから洞察を獲得し、その洞察を改めて自然言語で表現させるとしている。このデータ分析の取り組みでは、デジタルワークプレース/アプリケーションとの統合に着目し、各ベンダーのロードマップを評価する作業が重要になる。このようなAIガバナンスを確立することで、エラーやハルシネーションを最小限に抑えることができる。そしてさまざまな取り組みに対し、AI-Readyのデータ原則による評価が可能になるという。
(6)のAIエージェントの価値を引き出すためには、大規模言語モデル(LLM)だけに依存するのではなく、ほかの分析およびAI手法も組み合わせて考える必要があるという。D&Aリーダーは、AIエージェントがアプリケーション間でデータをシームレスにアクセスし、共有できるようにする必要があるとする。
(7)については、特定の領域内において、より正確で文脈に適した出力を得るために、大規模言語モデルではなく小規模言語モデルを検討することが推奨されるという。それには、拡張生成や領域特化型モデルの微調整に必要なデータを提供することが求められるという。小規模言語モデルは、特にオンプレミスで運用する場合において、機密データの取り扱いや計算リソースとコストの削減に役立つとしている。
(8)のコンポジットAIは、複数のAI技術や手法を組み合わせることで、AIの影響力や信頼性を向上させることができるとする。D&Aチームは、生成AIやLLMにデータサイエンス、機械学習、ナレッジグラフ、最適化などの手法を組み合わせた包括的なAIソリューションを提供する必要があるという。
(9)では、今後データドリブンから意思決定中心のビジョンへの移行が重要になるという。モデル化による価値が高く見込まれる意思決定を優先し、意思決定インテリジェンス(DI)のプラクティスを適用していく。そのためにDIプラットフォームを構築することが推奨される。ただし、意思決定の自動化における倫理、法的、コンプライアンスの側面に対処する必要があるとした。
同社は、日本企業のD&Aリーダーに対して、トレンドに目を奪われて振り回されないよう注意しつつ、自社の現状を鑑みた現実的な「次のステップ」を見つけるべきだとした。また、D&Aは専門知識を有する限られた人のものから、より一般的なものへと進化しつつあるという。その上でD&Aリーダーは、限られたリソースで多くのことを行うのではなく、多くのリソースでさらに多くのことを行うように求められているとした。