職場でのAI依存が高まる中、雇用主はAIに関連する経験とスキルを持つ人材を求める傾向が強まっている。米The Wall Street Journalが引用した雇用データによると、2025年以降米国で募集されたテクノロジー関連の仕事の約4件に1件が、AIスキルを持つ人材を募集していることが分かったという。こうした傾向は、具体的に何を意味するのだろうか。
企業が必要とする人材は、AIツールやプラットフォームを構築・設計できる開発者、AIシステムを管理・サポートできるITの専門家、AIを日常業務に組み込める人材など、多岐にわたる。具体的なニーズはさまざまだが、いずれにしても需要は高まっている。
AI関連の技術職は数年間で倍増
例えば情報産業では、AIの開発や導入で大きな役割を担っている大手テクノロジー企業が数多く存在する。AI関連の仕事の創出状況をマッピングする共同プロジェクト「UMD-LinkUp AI Maps」のデータによると、1月に掲載されたIT関連の求人のうち36%がAIに関連するものだった。金融や専門サービス分野では、銀行やコンサルティング会社をはじめとした企業が、AIのアルゴリズムやモデルの構築・利用方法に精通した人材を求めている。
そのほかの業界でも、AIに重点を置いたIT関連の求人が増加傾向にある。The Wall Street Journalが挙げた例では、医療関連の求人の中でIT専門職は少ないものの、1月に確認された新しい求人のうちAI関連のものは数年前の約2倍に増加した。
最近のAIブーム以前から、AIや機械学習(ML)に関わる仕事は当然存在していた。しかし、2022年末に「ChatGPT」が公開されて以降、需要が急増し始めた。UMD-LinkUp AI Mapsのメンバーによるホワイトペーパー「Diffusion of AI Jobs Across Economic Sectors(経済セクターにおけるAI関連求人の広がり)」では、一般的な求人とAI関連の求人の推移を示している。
ChatGPTの登場以降、全体の求人件数は減少
ChatGPTの正式提供から2年間の間に、求人広告全体の件数は17%減少しており、企業が新規採用を減速させていることが示唆されている。2022年第4四半期~2024年第4四半期にかけて、IT関連の求人広告の件数は35万4070件から25万8706件へと27%減少した。
しかし、AI関連の職種については、全く異なる状況だ。同期間において、そうした職種の求人件数は2万9509件から4万9577件へと68%増加した。2年という期間を踏まえ、ホワイトペーパーの著者はこれを「ChatGPT効果の明確な証拠」と呼んでいる。
そのほかの調査結果でも、AI関連の求人の急増が浮き彫りになっている。LinkedInが1月に発表した「米国で最も成長の速い25の職種」に関するレポートでは、リストにAI関連の職種が3つ含まれていた。1位と2位はそれぞれ、AIエンジニアとAIコンサルタントだった。12位には、AI研究者もランクインしていた。こうした職種の多くは、大規模言語モデル(LLM)、ディープラーニング、「Python」のプログラミング経験を必要とする。
雇用主は、AIの開発者やテクノロジーの専門家だけを求めているわけではない。人材派遣会社Robert Halfの上級地域ディレクターであるThomas Vick氏は、The Wall Street Journalの取材に対し、AIを既存の業務に統合できる人材も求めていると語った。例えば、AIを活用して潜在的なセキュリティ上の脅威をより適切に評価できるサイバーセキュリティエンジニアなどが求められるかもしれない。
AIのスキルと経験を持つ専門家の需要の高まりは、IT系労働者にとって朗報である。なぜなら、そうした職種は給与水準が高く、雇用が安定しているからだ。再就職支援会社Challenger, Gray & Christmasでシニアバイスプレジデントを務めるAndy Challenger氏は、The Wall Street Journalの取材に対し、次のように語った。「今のところ当社のプログラムを通じて最先端のAIスキルを持つ人材はあまり見つかっていない。つまり、企業がそのような人材を手放さないということだ」

提供:ZDNET
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。