キンドリルジャパンは、メインフレームの動向を解説するメディア向け説明会を行った。メインフレームはレガシーシステムの代表格として扱われることが多いが、さまざまな方法でモダナイズ(最新化)する事例が増えており、多数の企業が今後も経営や事業の基幹を担うミッションクリティカルなシステムに位置付ける考えであるという。

Kyndryl Core Enterprise&zCloud部門担当グローバルプラクティスリーダーのPetra Goude氏
解説を担当した米Kyndryl Core Enterprise&zCloud部門担当グローバルプラクティスリーダーのPetra Goude氏によると、同社はグローバルで約3000社、日本では約600社の顧客のメインフレームを担当する。同社は2021年にIBMからスピンアウトしたが、IBM時代から現在まで「IBM z」や「zCloud」などのIBMメインフレームを中心に、他社のメインフレームソリューションを含め約60年わたりメインフレーム顧客をサポートしているという。
メインフレームの現状についてGoude氏は、「DXやビジネス変革が求められる時代になり、顧客が最も重要としているのは、優れたビジネスの成果を得るためのデータの活用やAIの効率的な利用だ。一方で、クラウドなど新しいシステムとのハイブリッド環境で適正なバランスをどう図るのか、どのような方法で最新化していくべきか、高まるセキュリティのリスクやコンプライアンスの課題にどう対応すべきかといった課題がある。そして、それらの課題に対処する人材やスキルが世界的に不足している」と指摘する。
約3000社のメインフレーム顧客を対象に実施した同社の2024年の調査では、大半の顧客にとって、今後もメインフレームが重要な位置付けにあることが明確になったとのこと。「メインフレームが業務に不可欠」との回答は89%に上り、66%がメインフレームの最重要機能にセキュリティを挙げた。
Goude氏は、「しかし、パラドックス(逆説)がある」とも述べる。回答者の96%は、メインフレームから一部のワークロードを他の環境に移行しているという。また、別の調査では、94%(日本では94%)がIT環境自体の最新化を最優先事項としつつも、実際に進めているのは29%(同25%)だった。つまり、回答企業が示すメインフレームの重要性やITシステムへの期待とは裏腹に、ハイブリッド化の進展や最新化の遅れといった現実がある。なお、同社のクラウド型IT運用自動化ソリューション「Kyndryl Bridge」のデータに基づくと、Kyndryl Bridgeで管理する顧客システムのサーバー、ストレージ、ネットワーク、OSの44%(同38%)が耐用年数を迎えている現実もあるとそうだ。
同社は、メインフレームの最新化について「Modernize On」「Integrate With」「Move Off」の3つのパターンを顧客に提案しているという。
Modernize Onはメインフレームそのものの最新化になり、国内では保険会社が富士通製のメインフレームをIBM製に移行、統合した事例がある。Integrate Withは、メインフレームとクラウドなどのハイブリッド構成によってワークロードの配置の最適化や部分的な変更を実施する。国内では、クレジットカード会社がメインフレームとAmazon Web Services(AWS)間でデータレプリケーションを行う構成にして、アプリケーション開発でのアジリティーを向上した。Move Offは、メインフレームから完全に脱却するもので、国内では、鉄鋼メーカーがメインフレームのアプリケーションとデータをLinuxベースのプライベートクラウドに移行したケースがあるとのことだ。

メインフレーム最新の主な3つのパターンとKyndryl顧客の事例(Goude氏の説明資料より)
Goude氏は、いずれのパターンにおいても最新化を図ることで、メインフレーム性能値(Million Instructions Per Second:MIPS)の消費量が削減され、金額的なコストが大幅に削減されると説明する。例えば、上述のIntegrate Withにおけるクレジットカード会社では年間で約100万ドル、Move Offの鉄鋼メーカーでは同1000万ドルの削減が見込まれているという。
日本についてGoude氏は、IBM以外にも富士通やBIPROGY(旧称:日本ユニシス)など複数メーカーのメインフレームが稼働したユニークな市場だと話す。「メインフレームが日本の社会を動かしていると言ってよく。メインフレームを頼りにしており、今後も長く利用する意向が強い。グローバルの中でも最新化へのニーズは日本が高い。だからこそ、われわれは、これからも日本のメインフレーム事業に投資を続け、強化もしていく」と語った。
そうした取り組みとして同氏は、直近では日本向けに、メインフレームが稼働する最新鋭データセンターとクラウドをつなぐネットワークハブ機能を新たに提供したほか、東日本と西日本の同社データセンターで「IBM z16」を用いて、15万MIPS以上の高い処理能力を持つzCloudサービスを拡充したことを強調。パートナーエコシステムを通じてメインフレームが抱える課題の解決も支援しているとアピールした。